2026年4月20日、経済産業省の自動車サプライチェーン取引適正化会議(第2回)が開催されました。
2月の第1回会議について、前回の記事で「これは取適法時代の地ならしではないか」と申し上げましたが、今回はその地面に、初めて輪郭が入った回と申し上げてよいかと思います。
会議の中心となったのは、実態調査の結果です。
調査は2026年2月〜3月上旬にかけて実施され、報道によれば受発注双方から約1,500件の回答が寄せられたとされています。
自動車産業における大規模な悉皆型の調査としては、およそ19年ぶりの取り組みとのこと。(注1)
結果は、①型等取引、②補給品、③代金決定、④その他の4つのテーマに整理されました。
以下、公表資料から、輪郭の見えやすい論点を拾っていきます。
今回の会議で目を引いたのが、型等取引のテーマでの資料の厚みでした。
自動車工業会、自動車部品工業会、金属プレス工業協会、金属熱処理工業会――4つの業界団体が、それぞれ別個に型等取引に関する資料を提出しています。
会議資料の構成そのものが、この論点の重みを物語っているように感じられました。
実態調査の回答からも、「保管費はもらえていない」「保管費の減額を要求されるケースがある」「取適法対象外を理由に支払いを拒絶された」といった声が、具体例として記録されています。
一部では支払いが始まり、共同でのリスト化や廃却活動も進み始めているとのことですが…
一方で、「古い金型が山積みでリスト化が困難」「生産終了後も廃棄の通知がない」「担当者が変わり交渉が進展しない」といった運用実態も、並置されて記されています。
一歩進んだ、けれどまだ大きく残っている。
この温度感が、今回の資料からは伝わってくるように思います。
今回の調査で浮かんだ特徴的な論点のひとつが、補給品の構造的赤字受注です。
量産が終わっても、供給保証などを理由に生産継続が求められ、発注ロットは極少になる。
にもかかわらず単価は量産時のまま。
結果として製品1個あたりのエネルギーコストや労務費は量産時を大幅に上回り、赤字での受注を続けざるを得ない――。
そうした声が、具体例として資料に載っています。
「15年以上流動のない品番について、供給保証を理由に生産終了ができない」という回答もあり、「いつ、どうやって終わらせるのか」という出口側の論点も、可視化されてきています。
代金決定のテーマでは、「原材料価格・エネルギーコスト・労務費の転嫁について、交渉できる環境が整いつつある」「一方的な原価低減率の提示は最近見なくなった」といった、前向きな変化を示す声が目立ちます。
一方で、新しい論点として記されているのが、SDV時代のソフトウェア対価の算出方法です。ハードウェア中心の積み上げ型では整理しにくい対価の扱いをどうするか、という問いが俎上に載りました。
また、「取適法適用対象外の取引」――とりわけ海外取引――では、過度な品質要求や値引き要請が残っているという声もあります。
制度の外側に残る取引の論点も、同じ文脈で記録され始めた、と申し上げてよいかと思います。
2月の第1回を「地ならし」と表現しましたが、第2回で示された実態調査は、その地面の凹凸に、名前をつけていく作業でもありました。
型等の保管と廃棄、補給品の出口、ソフト対価と域外取引――どの論点も、一朝一夕で片付くものではありません。ただ、「どこを見るのか」という目線は、会議資料を通じて、かなり明確になってきています。
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本日もお読みいただき、ありがとうございました。
それではまた、次回のブログで。
執筆担当:川上 佳子
※本稿は、2026年4月20日開催の「自動車サプライチェーン取引適正化会議」第2回会議の公開資料(資料3〜7)に基づいて作成しました。
(注1)調査件数および「19年ぶり」という表現は、毎日新聞2026年4月20日報道に拠ります。公表資料では件数・年数への直接の言及はありません。
代表取締役 福島 隆史
公認会計士。2008年、SusTBを設立。企業の自主的かつ健全な情報開示をサポート。
川上 佳子
中小企業診断士。銀行、シンクタンク勤務を経て2002年より上場企業の情報開示を支援。