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東洋アルミの半導体参入——「どこに売るか」を見ると、事業転換とは別の地図が見える

ニュース

売るのは箔ではなく「表面の形」

東洋アルミニウムが、アルミ箔の表面加工技術を生かした半導体向け製品の販売を3月に始めたと、4月15日付の日本経済新聞が報じました。

 

参考記事:

日経電子版「東洋アルミ、『表面つるつる』半導体で通信サクサク EV低迷でシフト」(2026年4月9日)

 

売るのは箔そのものではなく、ナノメートル単位で制御した「表面の形」。樹脂に転写して銅配線との界面を整えることで、AI・高速通信向け半導体の性能向上に応えようとしています。

 

このニュースの表面的な読み方は、「EV向けが失速したので半導体へ」という事業転換の話でしょう。

実際、EV向け製品の売上は2021年ごろのピークから半減し、2024年にはUACJ製箔との経営統合も中止になっています。次の柱が必要だったことは間違いありません。

 

売り先の地名が、そのまま経済安保の地図になっている

ただ、この話は「どこに売るか」を見ると、少し違った地図が見えてきます。

記事によれば、同社は国内に加えて米国、韓国、台湾の半導体基板メーカーに売り込む方針です。
この3カ国はまさに、先端半導体パッケージ基板のサプライチェーンそのものです。

日本勢は半導体の主要な部素材で世界シェア約5割を占めるとされ、とくに先端パッケージ基板や高密度基板に関わる材料・工法の層でも存在感を持っています。

 

東洋アルミの動きは、このすでに厚い日本の素材レイヤーをさらに一層厚くする話として位置づけられます。

 

EVと半導体、二つの市場の地政学的な非対称

もうひとつ注目したいのは、EV市場と半導体材料市場の地政学的な非対称性です。

EV市場はここ数年、中国勢の支配力が急速に拡大した領域です。川上の素材メーカーにとって、顧客基盤が特定の地域に集中していくリスクは現実のものでした。

一方、先端半導体の材料・パッケージング層は、日米韓台が技術と供給を主導している領域です。東洋アルミが軸足を移そうとしている先は、経済安全保障の観点から見ても、日本企業のポジションが比較的強い領域だと読むことができます。

同社は2025年8月、米国LQDX社が持つアルミ箔を用いた基板工法に関する特許一式を取得しており、知財面でもこの領域への関与を深めています。
単に新製品を出しただけではなく、技術と知財の両面でこの供給網の中に入り込む動きです。

 

サプライチェーンは「リスク」だけか

サステナビリティ開示の実務では、価値連鎖、とりわけサプライチェーンは、まずリスクの所在として語られることが少なくありません。
供給途絶、人権、環境負荷、地政学的な集中——論点は多岐にわたることから、十分理解できる話ではあります。

ただ。

とはいえ、ISSB/SSBJの考え方では、価値連鎖におけるリスクだけでなく機会もあわせて捉えることが前提になります。。

この視点で今回の東洋アルミの話を読み直すと、サプライチェーン上のポジションそのものが機会になっている事例として読めます。

こうした「供給地図上の立ち位置が競争力になる」という話を、企業がどう言語化していくのか。こうした動きが今後の開示でどう語られていくか、注目しています。

 

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今週もお読みいただき、ありがとうございました。

それではまた、次週のブログで。

 

執筆担当:川上 佳子

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