統合報告書のトップメッセージやインタビュー記事を制作しているとき、あるいは、読み手として読んでいるとき、こんなふうに感じることがあります。
語られている内容は正しい。
施策もKPIも揃っている。
なのに、どこか平板で、読み手の記憶に残る気がしない。
この問題の原因とされることが多いのは、「文字数」です。
確かに。
非常によくわかります。
たいていのプロジェクトでは、予算とページ数の制約と戦うことになります。
そして、限られた紙幅に理念も施策も配慮事項も詰め込めば、文章は、均(なら)されてしまいがちです…。
ただ、実務の現場にいると、それだけでは説明がつかないケースもあります。
それは、もともとの素材の段階から「整った一般論」しか出てきていない場合です。
たとえば、人的資本についてCHROに取材するとします。
質問リストには、
こういった項目が並ぶことが多いのではないでしょうか。
「エンゲージメント向上のために、どのような施策を行っていますか」
「エンゲージメントサーベイをどう活用していますか」
「人的資本リポートを出す狙いは何ですか」
この種の質問は、短い記事を安定して成立させるには優秀です。
論点が散りにくく、企業側も答えやすいです。
ただ、明確な弱点もあります。
その弱点とは、
施策を聞けば、返ってくるのも施策の説明である
ということです。
制度や仕組みの話は出てきます。
ですが、
どこで危機感を持ったからその施策なのか、
社内のどんな惰性と戦っているのかといった、
「言葉に体温を与える」ような部分は出にくい質問なのです。
質問設計に正解のテンプレートはありません。
企業ごとに、そのフェーズごとに、文脈が違います。
ただ、少なくとも言えることがあります。
短いメッセージの中にも「その人らしさ」や「温度」をこめる問いは、
たとえば
どこで「このままではまずい」と思ったのか
その施策は、経営の何と結びついているのか
あえて課題を開示することで、何から逃げなくなるのか
などを質問することで、引き出せる可能性が高まります。
文章力やライティングスキルは、原稿の品質を決める重要な要素です。しかし、その前段階である質問設計が、引き出せる素材の質を決めています。
素材の段階で論理の背骨が引き出せていれば、短い紙幅でもメッセージは残ります。逆に、質問設計の段階でそこが引き出せていなければ、あとから文章だけで挽回するのは容易ではありません。
統合報告書の制作において、質問設計は見えにくい工程ですが、メッセージの質を左右する分岐点であると考えます。
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本日もお読みいただき、ありがとうございました。
それではまた、次回のブログで。
執筆担当:川上 佳子
代表取締役 福島 隆史
公認会計士。2008年、SusTBを設立。企業の自主的かつ健全な情報開示をサポート。
川上 佳子
中小企業診断士。銀行、シンクタンク勤務を経て2002年より上場企業の情報開示を支援。