サステナビリティレポートやサステナビリティサイトの「汚染」については、正直なところNOx/SOxの数字を並べるくらいだった──そんな方も実はいらっしゃるかもしれません。
が、その前提は今後、少し変わっていきそうです。
GRIが、汚染(Pollution)に関するトピック別基準プロジェクトの公開コンサルテーションを開始しました。
意見募集の期限は2026年6月8日。
対象となる公開草案は、以下の3つです。
最終的なPollution Standardsの公表は2027年を予定しています。
今回の草案が、既存基準のどこに当たるかを整理しておきます。
GRI 305: Emissions 2016のうち、Disclosure 305-7(NOx、SOx等)を置き換える草案です。
草案の説明メモによると、PM2.5やPM10など具体的な汚染物質の追加、管理方針、削減目標と進捗、法令違反・事故情報まで開示範囲を広げる構成になっています。
なお、同じプロジェクト内では305-6(ODS:オゾン層破壊物質)も対象に挙がっていますが、こちらの改訂は後段で実施するとされています。
GRI初の土壌汚染に関する独立したトピック別基準案です。
気候や排水・廃棄物に比べて扱いが薄かった領域に、はじめて独立した報告枠組みが用意されるかたちです。
既存のGRI 306-3: Significant Spills(重大な漏出事故)を置き換えます。
「漏出事故」にとどまらず、汚染関連か否かを問わずあらゆる重大事故を対象とし、予防・備え・対応まで含む報告枠組みへ拡張しています。
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自社の報告でGRI 305-7や306-3を使っている方は、今回の草案がそのまま改訂先になります。
まずは現行の開示内容とのギャップを確認しておくとよさそうです。
GRIが先行して公表した調査報告書(1,000社の上場企業を対象、2023〜2024年の報告書を分析)では、サステナビリティ報告書を出している企業が91%に上る一方で、特定の大気汚染物質に言及しているのは4割未満、定量データを開示しているのは3割未満でした。
報告書は出しているけれど、汚染の「中身」まではなかなか届いていない、というのがGRIの現状認識です。
また、IQAirが2026年3月に公表した2025 World Air Quality Reportでは、143の国・地域のうち130(91%)がWHOの年平均PM2.5ガイドラインを超過しています。
GRIは自らのニュースリリースでもこのデータを引用しており、基準見直しの背景として位置づけています。
GRI公式ニュースでは、今回の開示案が国連ビジネスと人権に関する指導原則(UNGPs)およびOECD多国籍企業行動指針と整合する設計であること、さらにESRS(欧州サステナビリティ報告基準)との相互運用性も意識していることが明記されています。
GRI準拠で報告している企業にとっては、ESRSのE2(汚染)対応との接続点としても気にしておきたいところです。
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以上、速報ベースではありますが、今後のご参考となりましたら幸いです。
それではまた、次回のブログで。
執筆担当:
サステナビリティコンサルタント 川上 佳子
根拠資料
代表取締役 福島 隆史
公認会計士。2008年、SusTBを設立。企業の自主的かつ健全な情報開示をサポート。
川上 佳子
中小企業診断士。銀行、シンクタンク勤務を経て2002年より上場企業の情報開示を支援。