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今さら聞けない!「原単位」(Intensity)って、何?──「総量」では見えない企業の本当の負荷と最新ニュースの読み解き方

勉強用(初学者様向け)

この記事の3つのポイント

  • 「原単位(Intensity)」とは、活動1単位あたりの環境・社会負荷を示す指標であり、「総量」とは異なる視点を提供する
  • 砂糖税・炭素価格・再エネ課税などの制度設計は、企業努力が反映される「原単位思考」で組み立てられている
  • 投資家や開示基準も総量より効率を重視しており、原単位はこれからの対話の共通言語になっている

その「多い」「少ない」は、本当に正しい?

最近、「砂糖税」「再エネ課税」などのニュースが相次いで報道されています。

また、「炭素価格」といった言葉を目にする機会が増えました。

 

サステナビリティ担当になって間もない方々の場合、
なんだか専門的すぎて難しいなぁ…と思ってしまう話題ばかりかもしれませんが、

ご安心ください。

実は、これらのニュースの秘密を解くカギは、同じなのです。

 

たとえば、

  • 売上1億円あたりのCO₂排出量
  • 製品1トンあたりの水使用量
  • 100mlあたりの糖分量

 

これらに共通するのは、原単位もしくはIntensityという考え方です。
(以降は「原単位」で統一します)

 

そして今、砂糖税・炭素価格・再エネ課税といった制度設計の核心に、
この「原単位」の思想が組み込まれています。

 

原単位とは何か?

原単位とは、アウトプット1単位あたりの環境・社会負荷のことです。

「総排出量」とは違います。

① 総量の考え方

- CO₂を100万トン排出している
- 電力を100億kWh使っている
- 売上が1兆円ある

これらが、「総量」です。

② 原単位の考え方

- 売上1億円あたりのCO₂排出量
- 製品1トンあたりの水使用量
- IT機器消費電力に対する総消費電力比(PUE)

つまり、
「どれだけ活動して、そのうちどれだけ負荷を出しているか」を見る指標です。

 

なぜ今、原単位が重要なのか?

理由は、とてもシンプル。

総量だけでは「効率」や「努力」が見えないからです。

たとえば、

- 成長企業は売上も排出量も増える
- 大企業は絶対量が大きい

 

このため、総量だけで評価すると、

「大きい=悪い」

という単純な話になってしまいます。

 

ですが、原単位で見ると、

 

- 同じ売上でも排出量が少ない企業
- 同じ電力量でも効率が高いデータセンター
- 同じ飲料でも糖分濃度が低い商品

 

が見えてきます。

ここで初めて、事業者側にとって

「努力が報われる設計」

が可能になるのです。

 

開示基準も、すでに原単位へ

SASB基準では、多くの業種で「売上高あたり」「生産量あたり」の開示が求められています。

例:

- 食品飲料:売上$1,000あたりのエネルギー消費量(GJ)
- 化学:生産量トンあたりのGHG排出量(tCO₂e)
- テクノロジー:データセンターのPUE(Power Usage Effectiveness)

 

GHGプロトコルのScope 3でも、「販売製品の使用段階での排出」は製品単位で測定します。

つまり、投資家が見ているのは、

「総排出量が多いか」ではなく
「事業効率に対して排出が多いか」

なのです。

 

砂糖税も、実は「原単位」課税

WHOが後押しする砂糖税*1は、

100mlあたりの糖分量

に応じて段階的に課税する方式です。

 

興味深いのは、この設計の背景です。

「健康政策」「予防医療」という意味がもちろん第一なのですが、WHOは財政難に苦しむ政府に対し、「安定的な税収になりますよ」と伝えて、導入を促しています。

そして、その際に選ばれるのが「総売上課税」ではなく「糖分濃度課税」。

 

なぜでしょうか。

それは、企業努力で負荷を減らせば税負担も減る設計にすることで、政治的反発を抑えながら、行動変容を促せるからです。

 

つまり、

同じ飲料メーカーでも
同じ売上規模でも

糖分濃度が低い商品を作れば負担は軽くなる。

 

これは「罰」ではなく、

社会的負荷を価格に反映させる調整メカニズム

です。

 

再エネ課税は「面積あたり負荷」で測る

宮城県・青森県の再エネ課税*2においても、注目したいのは

「kWあたり課税」ではなく
「ha(面積)あたり課税」

という設計です。

 

同じ発電量でも、

- 森林伐採面積が大きい
- 景観への影響範囲が広い

場合、負担が重くなります。

ただし、地域合意がある場合は非課税。

これは「環境負荷の原単位」に「社会合意」という質的要素を組み込んだ設計です。

SLO(Social License to Operate)を、制度の中に数値化して埋め込んでいるのですね。

 

投資家は、総量だけで見るわけではない

ESG評価でも同じです。

- 売上あたりの排出量
- 生産量あたりの水使用量
- 従業員一人あたりの事故率

これらはすべて、原単位。

 

投資家は、

「どれだけ大きい会社か」ではなく
「どれだけ効率よく、社会と共存しているか」

を知りたがっています。

 

補足説明:
なお、GHG削減『目標』の設定においては、SBTiを中心に絶対量削減が国際的な主流となっています。

原単位目標は、効率改善は示せても排出総量が増えうるとして批判も受けます。

 

投資家が原単位を重視するのは、企業間の比較・評価の文脈であり、削減目標の水準を問う文脈では総量が優先されることは、サステナビリティ担当者さまとして押さえておきたいポイントです。

 

まとめ:原単位は「対話の言語」

原単位とは、成長を止めるための指標ではありません。

むしろ、

成長しながら、どれだけ社会との摩擦を減らせるか

を測るための物差しです。

 

そして今、制度も投資家も、この言語で話し始めています。

総量は「規模」を語る。
原単位は「質」を語る。

 

制度も投資家評価も、

どれだけやったか、よりも
どれだけうまくやったか

へ移っていきます。

 

課税も、評価も、開示も。

「原単位」というモノサシで見るとわかること、多くあるように思います。

 

ーーー

本日もお読みいただき、ありがとうございました。

それではまた、来週のブログで。

 

執筆担当:川上 佳子


*1 (ご参考)日経電子版『過剰な飲酒の社会的損失4兆円 「あえてノンアル」新潮流は日本にも』(2025年12月2日)より

世界保健機関(WHO)も警鐘を鳴らす。7月、アルコールやタバコ、砂糖を含む飲料に健康税を課し、増税によって35年までに価格を1.5倍に引き上げるよう求める「3by35イニシアチブ」を提起した。10年間で世界全体で1兆ドル(約150兆円)の税収増を見込む。

 

*2 (ご参考)日経電子版『東北で進む再エネ課税、地域共生を誘導 脱「エネルギー植民地」へ

青森県は10月から「再エネ共生税」を導入した。再エネの発電量に応じて課税する仕組み。再エネの建設が原則認められない「保護地域」などの発電施設には課税する一方、周辺住民からの同意が得られた「共生区域」は非課税にして乱開発に規制をかける。まだ実例はないものの、共生区域への移行に向けて複数の交渉が進む。

 

再エネ課税で先行するのが宮城県だ。同県は2024年4月に全国の都道府県で初めて「再エネ地域共生促進税」を施行し、森林を切り開く場合の発電を課税対象として定めた。ただし地域との合意形成があれば、非課税となる。

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