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2026年、日本企業が進める「ライトアセットなプラットフォーム戦略」──持たないことで広がる価値のかたち

価値創造ストーリー / 勉強用(初学者様向け)

この記事の3つのポイント

  • 建設費高騰や人手不足を背景に、日本企業では「重い資産を持たず、仕組みで広がる」ライトアセット型の事業モデルが静かに広がっている
  • ファミリーマートの駐車場活用やパーク24、カフェチェーンのFC戦略に見られるように、既存資産をプラットフォーム化する動きが進んでいる
  • 「持たない経営」は、資源効率やレジリエンス、パートナーシップといったサステナビリティの考え方とも重なる視点

 

サステナビリティやIRを担当されている皆さまのもとには、ESGや環境負荷低減といったテーマに加えて、「この先、自社のビジネスモデルをどう進化させていくのか」という問いが、経営層から投げかけられる場面も増えているのではないでしょうか。

いま、日本を代表する企業の間で静かに広がっているのが、「ライトアセット(資産を軽くする)なプラットフォーム化」という考え方です。

最近の企業動向を手がかりに、財務の専門知識がなくても理解できるかたちで、この新しい成長の方向性を整理してみたいと思います。

 

なぜ今、企業は「持たない」選択を始めているのか

これまで企業の成長といえば、自前で土地を取得し、建物を建て、人を雇い、事業を拡大していくことが王道でした。

 

しかし近年、日本では建設資材価格や工事費の上昇、人手不足といった制約が、より現実的な経営課題として重くのしかかっています。

建設コストの上昇は、国交省の統計や建設物価指数などでも確認されており、特に建設・外食などの現場型産業では、投資判断そのものを見直さざるを得ない状況が続いています。

こうした環境下では、土地や建物といった「重い資産」を自社で抱え続けることが、必ずしも成長に直結しなくなってきました。

 

そこで注目されているのが、物理的な資産の保有を抑え、ブランド、データ、システム、運営ノウハウといった“形のない価値”を軸に事業を広げる、ライトアセット戦略です。

 

駐車場がショールームになる時代

この考え方をわかりやすく示しているのが、身近なインフラを活用した事例です。

たとえば ファミリーマート では、店舗に併設された駐車場を活用し、自動車メーカーの新車展示や試乗の場として提供する取り組みが実施されています*1

これは同社および自動車メーカーの発表や報道でも確認されており、既存スペースを活用することで、新たな建設投資を伴わずに新しい収益機会を生み出しています。

メーカー側にとっても、高額なショールームを新設することなく、生活圏の中で顧客と接点を持てる点が特徴です。
「場所を持つ」のではなく、「接点を共有する」という発想への転換が見て取れます。

 

「仕組み」を提供する駐車場ビジネス

同様の構造は、駐車場最大手の パーク24 にも見られます。

同社は、自ら土地を保有するだけでなく、オンライン管理システムや会員ネットワークといった運営インフラを、外部の駐車場オーナーに提供するビジネスを展開しています。

公式情報でも、管理受託やサブリースといった複数の契約形態が示されており、「土地を持つこと」よりも「仕組みを回すこと」に価値の重心が移っていることがうかがえます*2

 

物理的な資産の拡張ではなく、プラットフォームの外部展開によって収益機会を広げる。これも典型的なライトアセット型戦略と言えるでしょう。

 

カフェチェーンも「仕組み」を提供する側へ

同じ変化は、カフェチェーンにも見られます。

報道によればタリーズコーヒージャパンや、「珈琲館」などを展開する C-United では、フランチャイズ(FC)を軸に出店戦略を見直す動きが伝えられています*3

資材価格の上昇などを背景に、直営中心の拡大から、パートナーとともにブランドを広げるモデルへと舵を切ろうとしている、という文脈です。

 

ここで重要なのは、単なるコスト削減ではなく、「自分たちで店舗を増やす」モデルから、「ブランドや運営ノウハウを外部に提供する」モデルへの構造転換が進んでいる点です。

重い投資を抱え込まず、価値の広がりを外部に委ねる。この発想こそが、ライトアセット化の本質だと言えるでしょう。

 

この動きが、サステナビリティとも重なる理由

一見すると、これらは財務や事業戦略の話で、サステナビリティとは距離があるように感じられるかもしれません。
ただ、視点を少し変えると、両者は深くつながっています。

 

既存の駐車場や空きスペースを共有することは、新たな建設や資源投入を抑え、社会インフラを効率的に使うことにつながります。
また、重い資産を持たない企業は、環境や市場の変化に応じて事業の形を柔軟に変えやすく、結果としてレジリエンスの高い経営を実現しやすくなります。

 

「所有」から「接続」へ

自社が保有している土地、設備、顧客接点、システム。
その中には、他社から見れば「ぜひ使ってみたい」と思われるプラットフォームの種が眠っているかもしれません。

 

本記事をきっかけに、社内の事業部門がどのような資産活用を検討しているのか、一度ゆっくり話を聞いてみる——ライトアセットという視点は、そんな対話の入り口としても、有効なのではないでしょうか。

 

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今週もお読みいただき、ありがとうございました。
それではまた、次回のブログで。

 

執筆担当:川上 佳子


*1 出典:日経電子版「ファミマ駐車場を新車展示場に メーカーに貸し出し、店内で商談も」(2025年1月15日)

*2 出典:タイムズ24株式会社ホームページ「駐車場運営ソリューションの提供

*3 出典:日経電子版「タリーズや「珈琲館」、FC店3〜8割増 資材高で出店戦略見直し」(2025年1月14日)

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