SusTB communications サスティービー・コミュニケーションズ株式会社

未来に響くコミュニケーションレポートの企画・制作×コンサルティング

HINTサステナ情報のヒント

資産効率を問われる時代にJR東海・東京建物・イトーキが選んだ「ソフト化」のお話

ニュース / 価値創造ストーリー / 資本効率

この記事の3つのポイント

  • リニア開業後を見据え、JR東海は新幹線を「速さ」ではなく「過ごし方の価値」で再定義しようとしているかも
  • JR東海・東京建物・イトーキはいずれも、ハードを通じて他社の人的資本の成果に貢献することで、自社の資産価値を高めるという共通構造を持つ
  • 資産効率を重視する投資家の視線の中で、ハード企業には「どんな成果を生む環境か」を語る力が求められている

リニア時代、新幹線の存在価値とは?

JR東海さんといえば、私は個人的に「S Work車両」が好きですが、2025年12月19日には「新幹線ディスコカー」を実施したのだそうです。

 

こうしたニュースを耳にしたとき、「面白い取り組みだな」と感じつつも、こんな疑問が浮かんだ方もいらっしゃるかもしれません。

 

なぜ今、そこまで「過ごし方」に力を入れるのだろう?

 

この問いを少し引いて考えると見えてくるのは、リニア中央新幹線完成後を見据えた、既存新幹線の再定義という、かなり切実なテーマでした。

 

速さという価値を極限まで高めたリニアが登場するその先で、従来の新幹線は、どんな理由で選ばれ続けるのか——JR東海は、すでにその問いに向き合い始めているように見えるのです。

 

移動を他社の人的資本に効くインフラへ(JR東海)

S Work車両の本質は、電源やテーブルといった設備ではありません。

「この空間では仕事をしていい」という前提を明確にし、移動中の心理的摩擦をインフラ側が引き受けた点にあります。

新幹線を利用するのは、他社の従業員であり、顧客です。
JR東海は、他社の人的資本が成果を出しやすくなる時間と環境を設計することで、自社のハード(新幹線)の価値を引き上げようとしているように思えます。

 

オフィスと街で同じ構造を描く(東京建物)

この構造は、鉄道業界に特有のものではありません。
東京建物の取り組みを見ると、非常によく似た発想が見えてきます。

東京建物は、Human BuildingやYNKエリアマネジメントを通じて、
単に床を貸すのではなく、企業活動がうまく回る「場」そのものを提供することを志向してきました。

オフィスや街区は、そこに入居する企業の従業員にとって、生産性や定着、ひいては企業競争力に影響する重要な外部環境です。

つまり東京建物もまた、他社の人的資本が育つ環境を提供することで、自社の資産価値を高めようとしていると言えます。

 

オフィスを人的資本への投資デバイスに(イトーキ)

この流れの中で、先行例として位置づけやすいのが、イトーキです。

イトーキは、オフィス家具メーカーという立場から、オフィスを「人的資本への投資デバイス」と捉え直しました。

Office 3.0という考え方のもと、空間データと働く人の行動・エンゲージメントを結びつけ、「このオフィス投資は、どんな成果を生むのか」を語れるようにしました。

重要なのは、顧客企業の人的資本が成果を出すことを、自社の成長ストーリーへと還流させるロジックを描いた点にあります。

 

3社を貫く共通項――資産効率が進化を促す

このように見てくると、3社を貫く一本の線が浮かび上がります。

 

3社に共通しているのは、

- 自分たちは直接、人をマネジメントしていない
- しかし自分たちのハードは他社の人的資本の成果を左右する前提条件になっている

という立ち位置です。

 

そして今、資産効率をより厳しく問う投資家は、ハードを多く抱える企業に対し、

「どれだけ立派な資産を持っているか」ではなく、
「その資産が、どれだけ濃い価値を生み出しているか」

の説明を迫っています。

 

JR東海、東京建物、イトーキの取り組みは、その問いに対する業種ごとの答えとも言えそうです。

 

人的資本経営の鍵は、自社の外にも

人的資本経営というと、
どうしても自社の制度やKPIに意識が向きがちです。

ですが現実には、

- どんなオフィスを選ぶか
- どんな移動環境を使うか
- どんな空間に投資するか

といった外部環境の選択が、成果を大きく左右しています。

 

ハードを持つ企業が、そのハードを「他社の成果に貢献する装置」へと進化させる。

JR東海、東京建物、イトーキの試行錯誤は、資産効率と人的資本が交差する地点を示しているように思います。

ーー

本日もお読みいただき、ありがとうございました。

それではまた、次回のブログで。

 

執筆担当:川上 佳子

記事一覧へ