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HINTサステナ情報のヒント

未来技術は、静かに私たちの朝に宿る——リポソームが教えてくれるサステナブルな普及のかたち

健康経営

この記事の3つのポイント

  • リポソームは、医療用に開発された高度な「運び屋」技術であり、日常的なビタミンC摂取にも活用されている
  • 富士フイルムなどが支えるDDS技術は、COVID-19ワクチンにも使われた“未来医療の鍵”であり、今や誰もが恩恵を受けている
  • 技術の社会実装は、人的資本戦略や政策支援にもつながるサステナビリティの本質課題

ある朝気づいた「これはただのビタミンではない」

毎朝の習慣として、私はリポソーマルビタミンCを飲んでいます。
少し大げさに聞こえるかもしれませんが、これを飲むと体の反応が明らかに違うのです。
肌の調子や疲れにくさに、小さな変化が確かに現れる。

最初は「気のせいかな?」と思っていたのですが、調べてみるとその裏には、私たちが普段意識していないバイオ医薬の最先端技術が隠れていました。

実は私は毎朝、知らないうちに富士フイルムが世界レベルで磨いてきたDDS(ドラッグ・デリバリー・システム)技術のお世話になっていたのです。

この発見を通じて、「技術が社会に実装される」とはどういうことかを考えてみたら、
企業の人的資本・健康施策ともつながるサステナビリティのヒントが見えてきました。

 

リポソームとは何か――医療発の「運び屋」技術

リポソームとは、一言で言えば「薬を壊さずに、狙った場所まで届けるためのカプセル」です。

もともとは抗がん剤のように強力で副作用も大きい薬を、健康な細胞に当てずに、がん細胞だけに届けるための医療技術として開発されました。

このカプセルが特別なのは、細胞膜と同じリン脂質でできていること。体が異物と判断せず、自然に受け入れてくれるため、薬効成分を必要な場所に、必要な量だけ届けることができます。

 

では、なぜビタミンCにこの技術が必要なのでしょうか。

それは、通常のビタミンCが吸収効率の低い成分だからです。
水溶性のため大量に摂ってもほとんどが尿として排出されてしまい、胃酸でも壊れやすい。

しかしリポソームに包まれることで、胃酸の影響を受けずに腸から血液へ、そして細胞膜を越えて「確実に届く」ようになります。私が毎朝感じていた違いは、摂取量ではなく、この到達率の違いだったのです。

 

世界的な危機を支えた「包む」技術

リポソーム技術、あるいはその進化形である脂質ナノ粒子(LNP)は、実は私たちの記憶にも新しいCOVID-19ワクチンでも重要な役割を果たしました。

壊れやすいmRNAを安全に体内に届けるために使われたのが、まさにこの「脂質で包む技術」です。
この分野で世界的に活躍している企業のひとつが、日本の富士フイルムです。高度医薬品の製造におけるリポソーム応用では、世界でも有数の技術力を持っています。

つまり私たちは、
医療の最先端が生活者の手元” へと技術が降りてくる瞬間を、毎朝のサプリを通じて体験できるようになっている…ということになります。

かつては数千万円単位の医療でしか使われなかった技術が、量産と応用の進展によりコモディティ化し、日常にまで降りてきた。これはまさにサステナブルな技術普及の実例といえるのではないでしょうか。

 

技術の民生化が生むブレイクスルー:インターネット的な普及構造?

リポソーム技術の未来を考えるとき、私はインターネットの普及の歴史を思い出してしまいます。

インターネットが軍事利用から学術、そして一般社会へと広がったように、リポソームやDDS技術もまた、高度医療から美容・健康へと「民生化されつつあります。

「一部の人しか使えなかった技術」が「誰でもドラッグストアで買える」ようになるとき、普及は加速度的に進むものです。

 

「身体のインターネット」としてのDDS

ウェアラブル機器が体の状態をモニタリングし、それに応じて必要な成分を最適なタイミングで届ける。
そんな未来は、もう遠い話ではありません。

たとえば、今は「自分で選んでビタミンCを摂る」時代ですが、
近い将来、時計やアプリが「今、あなたのビタミンCが不足しています」と教えてくれるようになるかもしれません。

そしてその場で、最適なリポソーム製剤が自動で処方される——デジタルとバイオがつながったとき、健康管理の概念は根底から変わるのではないでしょうか。

 

治療から「予防」と「パフォーマンス向上」へ――人的資本戦略との接点

これまで医療技術は「病気を治す」ためのものでした。
けれども今、私たちが求めているのは、「病気にならない」「よりよい状態を保つ」こと。

サステナビリティの観点からも、病気を治療するために多大な医療資源を使うより、予防の段階でテクノロジーを活用して健康寿命を延ばすほうが、社会全体のコストも環境負荷も小さく済みます。

これは、企業が取り組む人的資本経営の一部としての健康戦略にも通じる話です。

 

政策の盲点:データばかりで解決策が育っていない

少しだけ政策の話をさせてください。
最近はマイナ保険証やヘルステック、健康経営といった「見える化」に予算が集中している印象を受けます。もちろん、医療費抑制という文脈では必要な取り組みです。

けれども、現場の担当者の皆さまからは
「見えるようになっても、改善する手段が追いついていない」
という声も多く聞こえてきます。

日本が本来強いのは、GoogleやAppleが得意とする情報基盤ではなく、
富士フイルムや花王に代表される企業が持っている「物質を動かす技術」なのではないでしょうか。

バイオ素材やDDS、リポソーム」など、「解決する中身」をどう育てるか。
今こそ、その視点が求められている気がします。

 

「検査」と「解決」がつながる未来

理想の未来は、とてもシンプルです。

あなたの体質データをもとに「ビタミンCの吸収率が低い」と分かり、
それに対応した個別設計のリポソーム製剤が提供される。

この「検査と解決」がひとつの仕組みとしてつながったとき、本当に健康な社会が見えてくるのではないでしょうか。

企業に置き換えるなら、社員に1万歩歩けと言うよりも、社員食堂の水に、吸収率を高めた栄養素を取り入れるほうが、無理なく、かつ社員の皆さまの健康に寄与するかもしれません。

 

おわりに:毎朝のビタミンCが教えてくれたこと

私たちが当たり前のように飲むサプリメントには、実は医療の最先端、企業の技術開発、量産体制、政策の方向性、生活者の選択が幾重にも折り重なっています。

サステナビリティとは、大きな理念だけでなく、未来技術が静かに生活へ浸透していくプロセスそのものでもある——朝のビタミンCが、そんなことを教えてくれた気がします。

 

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本日もお読みいただき、ありがとうございました。

それではまた、次回のブログで。

 

執筆担当:川上 佳子

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