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この記事の3つのポイント
日経のニュースを読んでいて、「あ、これはエンゲージメントサーベイの話そのものだな」と感じる瞬間があります。
最近、新聞記事で見かけた「日米関係は71%が良好と回答」という調査結果も、そのひとつでした。
日米関係「良好」71%、過去2番目の低さ 内閣府調査(日経電子版、2025年11月28日)
一見すると安心できる数字です。でもその裏で、前回より14.7ポイントも下がっている。
この落差に気づけるかどうかで、企業の「予兆」をつかむ力は大きく変わります。
ここでは、このニュースを手がかりに、私たちサステナ・IR担当者がサーベイ結果を解釈するときに陥りがちな「誤読」をそっとほどいていきます。
今回の調査では、「良好」と答えた人が71%。
数字だけ見れば「まだ大丈夫」と言いたくなる割合です。
でも、前回からは14.7ポイントの下落。
このような「変化の速度」に目を向けないと、大事な兆しを見落としてしまいます。
サーベイでも同じことが起きがちです。
経営陣は「7割が満足なら合格点」とコメントされることがありますが、
サステナビリティ担当者としては、
「今年、満足層がどれだけ減ったのか」
その移ろいのほうにこそ注意を向けたいところです。
特に近年は、離職率の高まりが数字に出るのは1〜2年後。
その前に現れるのは、こうした“満足度のモメンタム”です。
スコアの高さに安心するのではなく、変化の向きと大きさを読む——この視点が欠かせません。
ニュースでは、「関係は良好」とする人は7割いたものの、
「親しみを感じる」割合が低下したと報じられていました。
この組み合わせは、エンゲージメント分析でも、よく見られるサインです。
エンゲージメントには、
・給料や制度への評価が中心の「合理的エンゲージメント」
・共感や愛着による「情緒的エンゲージメント」
の2種類があります。
今回の結果は、
「関係は保つけれど、前ほどの親しみは感じない」
という距離感の広がりを示しているように見えます。
企業でこれが起きた場合、
それは「静かな退職」の予兆であることが少なくありません。
合理的には十分満たされていても、パーパスや文化への共感が薄れてしまうと
条件の良い他社が出てきた瞬間に、気持ちがすっと離れる
という状態が生まれたりします。
外からは見えにくい変化だからこそ、
サステナビリティ担当者さまとしては慎重に観察したいポイントです。
今回の調査で下落の背景に挙げられていたのは、
米政権の関税政策など、外部環境による影響でした。
この視点は、サーベイ解釈にもそのまま当てはまります。
エンゲージメントが下がると、どうしても「現場のマネジメントの問題では?」と語られがちです。
もちろん、それが要因になることもありますが…
でも時には、
・制度改定
・組織再編
・市場の急変
など、
現場ではどうにもできない「外部環境の変化」が原因であることもあります。
こんな時は、数字が下がったからといって「現場でなんとかしろ」と気合いを求めても、改善にはつながりません。
大切なのは、
「どの要因が、どれくらい影響したのか」を冷静に切り分ける
ことです。
ニュースの分析と同じく、数字の背後にある構造を丁寧に読み解く姿勢が欠かせません。
「良好71%」という見出しだけを見れば、つい「まだ大丈夫なのだな」と思ってしまいます。
ですが、私たちサステナビリティ担当者に求められるのは、その数字の奥にある動きをそっと拾い上げる視点だと思います。
なぜ15ポイントもの人が、前回より距離を置いたのか。
関係は維持すると答えながら、「親しみ」は薄れつつあるのはなぜなのか。
こうした心の「地殻変動」に触れられれれば、
組織の持続性に対する先回りが可能になります。
71%という一見安心できる数字も、実はさまざまな物語を抱えています。
その物語に耳を澄ませることが、
これからの企業に求められる「エンゲージメントの専門性」なのだと思います。
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本日もお読みいただき、ありがとうございました。
それではまた、次回のブログで。
執筆担当:川上 佳子
代表取締役 福島 隆史
公認会計士。2008年、SusTBを設立。企業の自主的かつ健全な情報開示をサポート。
川上 佳子
中小企業診断士。銀行、シンクタンク勤務を経て2002年より上場企業の情報開示を支援。