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この記事の3つのポイント
本記事は、2025年11月18日付ブログ「なぜ今、カスハラ対策が義務化されるのか ——高齢化と現場負荷が対策を不可避にしたテーマ」の関連記事です。未読の方は、あわせてご覧いただくと、より理解が深まります。
気がつけば11月も半ば。
街にはクリスマスの色が増え、スターバックスやタリーズのホリデーメニューを見ると、季節の訪れを感じます。
そんな中、アメリカのスターバックスで少し気になるニュースがありました。
従業員たちが、クリスマス前に顧客に赤いマグを配るキャンペーンの日にストライキに突入したというのです。
(ご参考記事)
米スタバ労組、「最多忙日」に40都市でスト突入 労使対立が激化(日経電子版、2025年11月14日)
報道では、
- オンライン注文の急増によるオペレーション負荷
- 交渉が進まないまま繁忙期に入ったことによる不満
などがストライキの背景として指摘されており、生活者の利便性や楽しさと働く側の現実が大きくずれてしまったことをうかがわせます。
そして実は、この構図——日本でも同じような現象が静かに広がりつつあるのです。
最近、こんな言葉を耳にすることが増えました。
皆さまの周りでは、いかがでしょうか。
「Uber Eats、前みたいにすぐ来ない」
「タクシーは、GO は全然来ないのにS.RIDE はすぐ来る」
私の知人(ミスタードーナツ勤務)からは、こんな本音を聞きました。
「Uber Eats の端末が鳴ると、正直こわいんです。
店内で手がいっぱいのときに“追加のタスク”が落ちてくる音に聞こえるので…」
注文しても届かない。
タクシーを呼んでも来ない。
この“便利なはずのアプリが便利でなくなる瞬間”には、何が起きているのでしょうか。
実は、この現象も米スタバのストと同じキーワードで読み解けます。
そのキーワードとは、「マッチング」です。
Uber Eats では、配達員・店舗・アルゴリズムの3者が「受ける/受けない」を判断し、3つが揃ったときに初めて1件の注文が成立します。
2024〜2025年にかけて配達報酬が引き下げられたこともあり、配達員の間では、
- この金額なら受けない
- ピーク時は避けたい
という選択が増えました。
そして、店舗側にも選択肢があります。
- 受注端末に届いた注文を、混雑時は断ることができる
(Uber Eatsの場合、端末に届いた注文を「承諾」しなければ、一定時間が経つとその注文は店側でキャンセルしたことになるそうです)
このように、
3者のうち誰か一人が「やらない」を選んだ瞬間に、マッチングは成立しなくなります。
その結果、ユーザーから見ると「届きにくい」という体感になります。
同じような現象は、タクシー配車アプリにも見られます。
都内では、
「GO は来ないのに、S.RIDE はすぐ来る」
という声が増えています。
私個人のヒアリングベースの調査ではありますが、背景にはいくつかの構造上の違いがあるようです。
- S.RIDE は東京に特化し、ドライバーの密度が高い
- 手数料やアプリ仕様が比較的シンプル
→ 「こっちのほうが働きやすい」と感じるドライバーが一定数存在
- 一方でGO はユーザーが多すぎて、ピーク時に供給が薄まりやすい
つまり、
タクシーアプリでも 「どのアプリを選んで働くか」というドライバーの選択 がつかまりやすさを左右しているようなのです。
Uber Eats でもタクシーアプリでも、働き手・店舗・サービス側の三者すべてに選択の自由があります。
これは大きなメリットですが、
一方で、利用者にとってはデメリットもあります。
店長がシフトを調整し、「今日は人が足りないから誰かお願い!」と声をかけるような調整者は存在しないため(アルゴリズムは、不足を見て調整したり、説得したりしません)、
マッチングが崩れたとき、誰も立て直さない
という「責任の空白」が生まれます。
Uber Eats が届きにくいことも、
GO がつかまりにくいことも、
その空白が表面化した例といえるでしょう。
この現象を、あえてサステナビリティの視点で眺めてみると、いくつかの示唆が得られます。
■ 便利さの裏には、個々の選択がある
テクノロジーの裏には人がいる。
サービスの便利さは、その人が「働きたいかどうか」という判断に、大きく依存している。
■ 便利なマッチングサービスを続ける鍵は人的資本への取り組み
報酬、安全、心理的負荷、業務量のバランス。
これらが崩れると、マッチングは機能しない。
■ マッチングの崩れは、事業モデルのリスクシグナル
遅延や不成立は、サービス品質の低下だけでなく、
事業の持続性に対する初期の警告とも言える。
■ 生活者としての小さな違和感は、未来を映す鏡
「タクシーが全然来ない」「デリバリーが届かない」という体感は、
ビジネスモデルの構造変化の兆し。
Uber Eats が届きにくくなったこと。
GO より S.RIDE がつかまりやすいこと。
そして、アメリカで起きたスタバのスト。
これらは一見バラバラの出来事のようですが、
実はどれも 、人が「やらない」を選び始めたときに起きる現象という意味で共通しています。
事業のサステナビリティは、
この「選び続けてもらえる条件」をどう設計するかにかかっている——
つまり、人的資本への取り組みが不可欠ということになりそうです。
みなさまの事業におかれましても、
便利さの裏側にある「選択の積み重ね」に目を向けることで、新しいヒントが生まれるかもしれません。
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本日もお読みいただき、ありがとうございました。
それではまた、次回のブログで。
執筆担当:川上 佳子
代表取締役 福島 隆史
公認会計士。2008年、SusTBを設立。企業の自主的かつ健全な情報開示をサポート。
川上 佳子
中小企業診断士。銀行、シンクタンク勤務を経て2002年より上場企業の情報開示を支援。