この記事の3つのポイント
週末に、資さんうどん成田店に行ってきました。
すかいらーくグループ入りを経て関東に進出した資さんうどん。
昼どきは今でも長蛇の列になると聞いていましたので、念のため開店1時間前に到着して待つことにしました。
さすがにその時間には誰もいませんでしたが、開店30分前くらいから徐々にお客さんが並び始め、10時の開店から20分以内にはほぼ満席に。11時に私たちがお店を出る頃には、すでに10組以上が並んでいる状況でした。
このように大人気の資さんうどん。
経営戦略やオペレーションの観点でも学びのポイントは多いのですが、本日はあえてサステナビリティの観点に絞って、「持ち帰り具材」のお話をしてみたいと思います。
注文端末を操作していて、ふと目にとまった「持ち帰り」のタブ。
何気なく開いてみると、そこには、「え、これも持ち帰りできるの?」と驚くほど多彩な具材が並んでいました。
- おにぎり
- カレールー(ハーフあり)
- 天ぷら各種
このあたりまでは別に驚くことでもないと思ったのですが…
- かしわ(鶏の甘辛煮…かしわうどんの具。ハーフあり)
- 肉(肉うどんの具。ハーフあり)
- きつね(=きつねうどんの具。ハーフあり)
- わかめ(ハーフあり)
- 椎茸(煮たもの=うどんの具。ハーフあり)
- ネギどっさり別皿
と続くのを見て、目が白黒してしまいました。
——うどんの具、そこまで売る?!
ひとしきり笑ったあとで気が付きました。
「これは単なる“お持ち帰り”ではないのでは?」
もしかするとこれ、家庭の夕食づくりやお弁当づくりの一部を、資さんが代行している——そうとらえることができるかもしれません。
もちろん、牛丼チェーンの「牛丼の具だけ」や、ラーメン店のチャーシュー単品など、具材だけを販売する発想自体は決して珍しいものではありません。
とはいえ、うどんチェーンで、きつねやわかめ、かしわ、肉、カレールーといった「ほぼすべての具材」を家庭向けに細かく単品販売している例は、少なくとも全国チェーンの中ではあまり見かけません。
資さんうどんは、外食企業でありながら、「和食のOEMメーカー」あるいは「家庭の冷蔵庫の一部」としての顔を持ち始めているように見えるのです。
ここは、企業のサステナビリティ担当者・IR担当者の方にとっても、示唆が大きいポイントだと感じました。外食と家庭、それぞれの困りごとが、このモデルの中で自然に接続されているからです。
1.外食の在庫ロスと、家庭の「もう一品」が合流する
まず、外食側・家庭側それぞれの課題を整理してみます。
- 外食の課題:仕込み量の調整が難しく、余剰具材がロスになりやすい
- 家庭の課題:「あと一品ほしい」「すべて手作りするのは負担が大きい」
資さんうどんの具材単品販売は、この二つの課題を橋渡しする仕組みになっています。
- 店内で使う具材を、そのまま家庭用の「便利素材」として販売
ー 消費の場が店内から家庭へと広がることで、在庫ロスの発生余地を小さくする
これは結果として、外食店舗の在庫が、家庭の夕食やお弁当に転用される「第二の出口」を持つことになります。これは、食品ロスの構造を変えるアプローチと言ってもよいかもしれません。
2.「ロス削減=負担」から「ロス削減=売上拡大」へ
多くの現場では、ロス削減という言葉が
- 管理が大変になること
- 手間が増えること
とほぼ同義で受け止められがちです。
これに対して資さんうどんのモデルは、
- 具材単品販売 → 新たな売上チャネル
- 仕込み量は基本そのまま → 廃棄リスクだけを別の出口に振り分け
- 原価の低い具材も、ブランドの安心感と利便性を付加して提供
という形で、ロス削減の取組がそのまま収益機会にもなっている点が特徴的です。
結果的に、
ロスを減らすほど利益が上がる好循環型モデル
が描けているのではないか——そう感じさせる設計になっています。
資さんうどんの事例は、食品ロス削減というキーワードだけでは語りきれない示唆を含んでいるように思いました。本ブログの読者である企業のIR・サステナビリティ担当者さまとご一緒に考えてみたいポイントを、3つに絞ってみました。
【1】ロス削減を「管理」から「価値創造」のテーマへ
ロス削減というと、「どう管理するか」「どう減らすか」という議論に終始しがちです。
一方で、資さんのように、余剰になりうるものを
- お得パック化
- 別メニューへの転用
- ギフト・通販商品化
- 「家庭の半調理品」としての展開
など、新しい顧客価値に変換する発想もあります。
ロスはコストであると同時に、「工夫次第で新規事業のタネにもなり得る」——そんな視点を持つことで、コスト面ばかりが注目されがちなサステナビリティに、「価値創造」というわかりやすいストーリーを付加できるのではないでしょうか。
【2】「家庭の事情」から逆算した商品設計でロス削減を加速
資さんの具材持ち帰りラインナップは、「家庭での使いやすさ」が一貫しているように思います。
- わかめ:味噌汁にそのまま追加できる
- きつね:家で茹でたうどんにのせるだけ。丼にも転用可
ー かしわ:丼ものやお弁当のおかずに使いやすい
- 鶏天:夕食の一品にも、子どものお弁当にも転用可
- しいたけ煮:副菜・炊き込みご飯など応用範囲が広い
企業がロス削減で行き詰まったとき、
「自社の余剰品は、誰のどんな困りごとに変換し得るか?」 という問いを立ててみること——それは、商品設計やチャネル設計のアイデアが広がるきっかけとなるように思います。
【3】「生活インフラ」になることこそ持続可能性の源泉
資さんうどんの強みは、ロス削減の仕組みだけではありません。
「ここに行けば、今日の夕飯がなんとかなる」
「あと一品が欲しいとき、とりあえず寄れる」
という 生活インフラ的な存在感そのものが、地域での支持を生み、結果として長期的な売上・利益につながっているように見えます。
サステナビリティの文脈では、経済価値と社会価値をどう両立させるかが常に問われますが、「生活インフラとして信頼されること」は、その接点の一つの答えなのかもしれません。
資さんうどんの、ナニコレ?とびっくりするような持ち帰り具材ラインナップは、
見方を変えれば、
- 廃棄を最小限に抑える食材循環モデル
- 家庭の調理負担を下げる生活インフラ
- ロス削減と収益性を同時に追求する外食×中食ハイブリッド
という、非常に示唆に富んだ取り組みにも見えてきます。
「ロス削減=コスト」ではなく、「ロス削減=価値創造」としてとらえる発想。
その一つの具体例として、資さんうどんのモデルを眺めてみることで、御社の自社のサステナ戦略や事業設計にも、新しいヒントが生まれるのではないでしょうか。
ーーー
本日もお読みいただき、ありがとうございました。
それではまた、次回のブログで。
執筆担当:川上 佳子
代表取締役 福島 隆史
公認会計士。2008年、SusTBを設立。企業の自主的かつ健全な情報開示をサポート。
川上 佳子
中小企業診断士。銀行、シンクタンク勤務を経て2002年より上場企業の情報開示を支援。