この記事の3つのポイント
本日(10月14日)は、「鉄道の日」です。
新橋~横浜間に日本で最初の鉄道が開通したこと、そして初代鉄道博物館が開館したことを記念して制定された日だそうですが――鉄道と言えば、管轄は国土交通省。そして、国土交通省といえば…今、まさに話題のあのニュースに関連する省庁ですので、本日のブログはこの話題を採り上げたいと思います。
連立離脱にともない、これまでずっと公明党の「指定席」とされてきた国土交通大臣のポストが流動化しています。
一見すると政治的な話題に思えるかもしれませんが、実は環境政策の実行力という観点で、サステナビリティ的にも見過ごせない話題です。
なぜなら国交省は、環境省や経産省と並ぶ「脱炭素実行部隊」のひとつ。グリーンインフラ、ゼロカーボンポート、住宅の省エネ化など、国の気候変動対策を現場で形にしてきた省庁だからです。
たとえば、環境省と共同で進めてきた「グリーンインフラ整備」は、治水や防災と生態系保全を両立させる象徴的な政策です。このような連携が一時的に揺らげば、地方自治体の予算配分や優先順位に影響が及ぶ可能性があります。
また、「ゼロカーボンポート(CNP)構想」は国土交通省主導で、港湾の脱炭素化(ターミナル電化や水素・アンモニアの受入環境整備など)を推進してきました。自治体や関係省庁との連携も進んでいますが、主導省庁の方針が変われば、支援スキームやスケジュールの再調整が必要になることも考えられます。
住宅・建築分野では、2025年4月からすべての新築建築物に対し、省エネ基準への適合が原則義務化されています。
この制度改正に際しては、国交省が中心となり、環境省の「地域脱炭素移行・再エネ導入促進交付金」とも連携して整備が進められてきました。今後、新たな大臣の政策優先度によっては、関連告示の運用や補助制度の見直しが生じる可能性がないとはいえません。
こうした省庁間連携の揺らぎは、企業の脱炭素・地域共生戦略にも波及する可能性があります。
たとえばゼロカーボンポート、ZEB・ZEH、EVインフラ、グリーンインフラなど、国交省を起点に官民連携や補助金を活用してきた企業様は、注意が必要かもしれません。経産省や自治体との複線的な協働体制の構築も視野に入れ、事業リスクの点検と戦略の見直しを進めることも選択肢かと存じます。
環境政策は、もはや環境省単独で完結するものではありません。
国交省や経産省、内閣府といった「実行部門」が足並みを揃えてこそ、初めて実効性が生まれます。
ゆえに、国交大臣ポストの変動は、単なる人事ニュースではなく、日本の環境トランジションを支える実装力そのものを左右する出来事でもあります。
各企業様におかれましては、今後の三省連携プロジェクトの進捗や補助制度の変化を丁寧に見極めつつ、ESG投資や脱炭素計画の再点検を行うなど、柔軟な対応を進められると良いのではないでしょうか。
本日の小稿が、皆さまのご検討の一助となれば嬉しく思います。
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本日もお読みいただき、ありがとうございました。
それではまた、次回のブログで。
執筆担当:川上 佳子
代表取締役 福島 隆史
公認会計士。2008年、SusTBを設立。企業の自主的かつ健全な情報開示をサポート。
川上 佳子
中小企業診断士。銀行、シンクタンク勤務を経て2002年より上場企業の情報開示を支援。