この記事の3つのポイント
この秋、東京都内の美術館ではハイブランドに関する展覧会が次々に開催されます。
この機会に(?)これらハイブランドが今、「再生」に力を入れていることを、本日のブログではご紹介したいと思います。
高級=唯一無二=新品で当たり前。
このような「常識」を見直す動きが、今ラグジュアリーブランドの中で静かに、しかし確実に広がっているようです。
なかでも私が注目しているのは、「再生(Regeneration)」の多面的な追求です。単なるリサイクルや排出削減にとどまらず、素材の生産地そのものを再生し、文化や生態系、職人技まで循環させていこうとする挑戦となっています。
以下では、代表的な3ブランド(LVMH、シャネル、ヴァン クリーフ&アーペル)の事例をご紹介します。
LVMH(モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン)は「LIFE360」戦略のもと、2030年までに新製品の100%をエコデザインにする方針を掲げ、バイオマスプラの開発やリフィル容器導入など、大胆な目標を次々と打ち出しています。
ブルガリを含むグループ全体で、
など、「循環する高級素材」の実現に向け、バリューチェーン全体で再設計を進めています。
独立系企業であるシャネルは、「NEVOLD(ネヴォルド)」というBtoBの循環素材プラットフォームを2025年に立ち上げました。ブランドの垣根を超えたスケールメリットを活かし、廃棄資源の再資源化を加速する試みです。
さらに、
など、社会インフラと自然生態系の“再生”を同時に狙う多面的アプローチが特徴です。
ヴァン クリーフ&アーペルは、リシュモン傘下のハイジュエリーブランドとして、原材料調達から製品寿命までをトータルで見直しています。
また、環境面では海洋保全や真珠母貝の養殖支援、森林再生コレクションによる啓発活動も行っています。
---
こうしたラグジュアリーブランドの取り組みは、単なる素材転換や修理サービスの拡充といった施策の寄せ集めではありません。
共通しているのは、「再生」を通じてブランドの価値そのものを時代に合わせて編み直しているという点です。
かつては「希少性」や「唯一無二」がラグジュアリーの価値基準でした。
しかし今、そこに加わりつつあるのは——
といった「文化資産の拡張」とも言える価値観です。
ご紹介してきたラグジュアリーブランドの取り組みから見えてくるのは、「再生」という言葉を超えた、自己更新の力です。
高級品は一見「変わらない」ことに価値があるように思えます。しかし実際には、素材や生産地、文化や顧客との関係性において、時代ごとの価値観を読み取り、しなやかに姿を変えてきました。
ラグジュアリーブランドは、美意識と持続可能性を同時に求める顧客が集まるからこそ、ブランドはその期待に応える形で自己更新を迫られ、結果として新しい価値観を試し、社会に先んじて提示する場になっているのかもしれません。
ブルガリが責任ある調達で宝石の意味を問い直すことも、シャネルが循環素材を社会全体に広げようとすることも、ヴァンクリーフ&アーペルが世代を超えて修復可能な作品を作り続けることも——いずれも「伝統を壊さず、しかし時代に合うように編み直す」実践です。
支持され続けるブランドとは、「唯一無二」という殻に閉じこもるのではなく、時代の美意識や社会課題を取り込みながら、自らを更新し続ける存在なのかもしれません。
サステナビリティに携わる私たちにとっても、「変わらないために変わり続ける」という姿勢は大きな示唆を与えてくれるように思いました。
---
今週もお読みいただき、ありがとうございました。
それではまた、来週のブログで。
執筆担当:川上 佳子
代表取締役 福島 隆史
公認会計士。2008年、SusTBを設立。企業の自主的かつ健全な情報開示をサポート。
川上 佳子
中小企業診断士。銀行、シンクタンク勤務を経て2002年より上場企業の情報開示を支援。