この記事の3つのポイント
2025年8月。連日35度を超える猛烈な暑さが続いたこの夏、消費と移動はどうなったのか—―昨日(2025年9月10日)、その結果を示す2つの統計が発表されました。
いずれも、「暑い=需要が増える」という常識的な見立てとは逆の動きです。
そこには、エネルギー・移動・消費行動が交差する、ネクサス的とでも言えそうな変化が見えてきます。
家庭用の冷蔵庫や店舗のショーケース、物流の保冷車両など、ビールの流通を支える“冷やす装置”は、猛暑の中でフル稼働を強いられたはずです。
しかし、販売実績を見ると、ビールはむしろ前年比で大きく減少しています。
供給側が想定通りの稼働を続けるなかで、需要側の行動が失速する――この構図は、「暑ければ売れる」という従来の前提が崩れつつあることを示しているようにも思われます。
本来なら「冷たいビールが飲みたくなる」はずの気候。しかし、東京都心では10日連続で35度超えとなり、屋外イベントや飲み歩きが敬遠された結果、飲用機会そのものが減少しました。
販売チャネル別に見ると、家庭用(スーパー等)は13%減と大きく落ち込み、飲食店向けは5%減にとどまりました。これは、外出自体を避けた人々が“飲むこと”そのものから距離を取ったことを意味しているのかもしれません。
8月の中古車登録・届出がマイナスに転じた背景には、新車供給の停滞があります。日産・トヨタなど主力メーカーの出荷が鈍り、8月の新車販売は前年比22%減。これにより下取り車が不足し、中古車市場への流通が絞られました。
中古車の登録台数が減少したこと自体が移動の鈍化を直接意味するわけではありませんが、車両の供給が滞ったことで、移動手段の再構築や買い替えによる行動の選択肢が狭まっていた可能性は十分にあります。
これらの行動を個別に見るだけでは、2025年8月の本質は見えてこないように思います。それらが相互に影響し合いながら、社会全体の適応行動として連鎖していた可能性を考えることで本質が見えてくるのではないでしょうか。
このような連鎖の中で、私たちの生活や消費スタイルそのものが、「暑さ」という外的圧力に対して静かに調整されていたことが見えてきます。
2025年8月の「冷やす」「飲む」「走る」の行動が鈍化した背景には、気温や供給制約といった環境変化に対する、生活者の自律的な適応がありました。
この変化は、単なる消費の停滞ではなく、「行動そのものがエネルギーや資源の使われ方に直結する」という現実を浮き彫りにしています。
これからのサステナビリティ戦略には「どのように使われ、いつ避けられ、どこで止まったか」という実際の行動変化を出発点に、エネルギー効率や循環設計を考え直していくことが求められるのかもしれません。
---
本日もお読みいただき、ありがとうございました。
それではまた、次回のブログで。
執筆担当:川上 佳子
代表取締役 福島 隆史
公認会計士。2008年、SusTBを設立。企業の自主的かつ健全な情報開示をサポート。
川上 佳子
中小企業診断士。銀行、シンクタンク勤務を経て2002年より上場企業の情報開示を支援。