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循環は「戦略」だ ――ドラギ・レポートとAZECが示す、次の10年の競争力のヒント

サーキュラーエコノミー / 勉強用(初学者様向け)

この記事の3つのポイント

  • サーキュラーエコノミーは、環境対策にとどまらず経済・脱炭素・安全保障の戦略的中核へと進化
  • EUの競争力コンパスやAZECアクションプランでは、「循環」が成長戦略と一体で位置づけ
  • 統合報告書では、循環の取り組みを「企業の構え」としてどう語るかが新たな差別化ポイントになる可能性

 

万博での「循環の体験」は始まりにすぎない

前回のブログでは、2025年大阪・関西万博で展開された「サーキュラーエコノミー研究所」や、リユース容器・マイボトル給水など、生活者が循環を“体験する”仕掛けをご紹介しました。
生活者に行動変容を促す動きは、日本のサーキュラーエコノミー政策にとって大きな一歩でした。

…が、世界の動きはその先を見ています。
では、海外では“循環”をどのように捉え、政策や経済に組み込んでいるのでしょうか?

今や欧州でもアジアでも、「循環」は環境施策ではなく経済と安全保障の中核として位置づけられつつあります。今回は、そんな国際的な潮流と、企業の開示実務にどうつながるかを読み解きます。

 

循環は「戦略」。そう言える根拠は

2024年9月に公表された、元ECB総裁マリオ・ドラギ氏の報告書「欧州の競争力の未来」。
この中で、サーキュラーエコノミーは以下の観点から明確に「経済政策」として扱われています。

 

  • バージン資源(新素材)が再生資源より安価に流通してしまう市場のゆがみ
  • 埋立・焼却がコスト化されないことでリサイクル材の価格競争力が低い問題
  • 資源の域外依存リスク(=経済安全保障)

 

こうした課題を是正することで、循環は「環境のため」ではなく「産業の安定と強さのため」になる――とドラギ氏は強く提言しています。

 

EU「競争力コンパス」——循環はもう政策の柱

2025年1月、EUはドラギ提言を受けて「Competitiveness Compass(競争力コンパス)」を発表しました。

この中でサーキュラーエコノミーは、「脱炭素」「グリーン技術投資」と並ぶ戦略の柱として明記され、以下のような数値目標と施策が提示されています。

  • 2030年までに循環経済市場1000億ユーロを創出
  • 再生資源の最低含有率の義務化
  • 再資源化ビジネスへの支援制度の構築

 

これらは単なる環境規制ではなく、

  • 企業にとっての事業機会
  • EU域内製品の設計基準の大幅な変化
  • 循環を組み込まなければ入れない市場の形成

を意味しています。

 

アジアでも同様の動きが:AZECアクションプラン

こうした欧州の流れに対して、アジアではどうでしょうか。

日本が主導する「アジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)」でも、2024年10月の首脳会合にて「今後10年のアクションプラン」が採択されました。

 

サーキュラーエコノミーに関わる主な要素は、以下の通りです。

  • サプライチェーン全体のGHG排出量の可視化
  • 廃棄物エネルギー回収(WTE)など循環技術の導入支援
  • 資源効率を高めるための技術協力・評価指標の整備

成長と脱炭素の両立のために、「循環」が必要であるという認識がアジアでも急速に共有されつつあります。

 

循環が「戦略のハブ」になる時代

EU、アジアの政策動向に共通するのは、以下の3つの要素を統合的に捉える発想です。

①産業競争力

②気候変動対応(脱炭素)

③経済安全保障(資源確保・供給安定)

 

そして、それらをつなぐ“ハブ”としての役割を果たしているのがサーキュラーエコノミーです。

循環は、これからの産業政策において「環境対策の1テーマ」ではなく、経済・気候・安全保障を束ねる軸に変わりつつあるのです。

 

統合報告書に「循環=戦略」の視点を

前回のブログでは、統合報告書における「循環の語り方」について簡単に触れました。
今回はもう一歩踏み込み、なぜいま、そのような言語化が必要とされるのかを、読み手側の変化から見てみたいと思います。

 

国際的には、EUの競争力コンパスやAZECのアクションプランに見られるように、サーキュラーエコノミーは「環境によい」から「社会を支える戦略要素」へと位置づけが変化しています。

この認識の変化は、当然、投資家や規制当局が企業に求める視点にも波及します。

 

たとえば──

 

  • 再生資源の使用はコスト競争力だけでなく、地政学リスクへの耐性として評価されつつある
  • 製品設計の循環性は、「リニア型モデルからの脱却」という構造転換力の指標になる
  • Scope3削減の一環としての再利用・長寿命設計は、ネットゼロ戦略の中核として期待される

このように、“循環的であること”は、企業価値の側面から見てもますます重要な評価軸となっています。

 

だからこそ、統合報告書では「リサイクル率◯%」のような実績の羅列ではなく、循環が企業の競争力やリスク耐性にどう結びついているかというストーリーを、自社らしい視点で描くことが求められているのではないでしょうか。

 

これからは、“何をやったか”ではなく、“なぜそれをやるのか”を語るレポートが選ばれる時代。
循環を、単なる成果ではなく、「未来に対する構え」として描く。
その姿勢こそが、次の開示に求められる視点ではないかと感じています。

 

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本日もお読みいただきありがとうございました。

それではまた、次回のブログで。

 

執筆担当:川上 佳子

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