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この記事の3つのポイント
「アルミニウムは“電気の缶詰”」。そんな言葉を耳にしたことはありますか?
実はアルミ1トンを新しくつくるのに必要な電力は、約1万5000キロワット時。これは鉄の約20倍にもなります。つまりアルミは、製造段階でのCO₂排出が非常に大きい素材なのです。
とはいえ、建材・鉄道車両・家電・飲料缶など、私たちの身の回りのあらゆる製品に使われている存在でもあります。サステナビリティを担う企業にとって、「この素材をどう脱炭素化するか」は避けて通れないテーマと言えるでしょう。
(ご参考までに、鉄の電炉生産は一般に1トンあたり約400〜700kWhとされ、製法によって大きく異なります。アルミ新地金は“桁違いの電力”を要する、というイメージを持っていただければ十分です。)
アルミ圧延大手のUACJが、再生可能エネルギーで製造された「グリーン地金」を使用したアルミ薄板の一般販売に踏み切る方針が報じられました。
(参考記事)
UACJ、脱炭素アルミ薄板を一般販売へ 建材や新幹線に売り込み(日経電子版、2025年8月27日)
このニュースで特に注目したいのは、「グリーンアルミが”在庫品”として常時購入可能になる」という点です。
これまで脱炭素アルミは個別契約ベースの“特注品”として扱われることが多く、調達のハードルが高いものでした。日経報道によれば、あらかじめ在庫を用意し「いつでも買える」体制とするのは日本で初めてとされています。
こうした動きの背景には、企業のScope3排出量の削減ニーズが高まっていることが挙げられます。サステナビリティ開示基準への対応が本格化し、「選べる低炭素素材」は企業価値を語るうえでの武器になりつつあります。
「グリーンアルミ」とは、再生可能エネルギーを使って、CO₂排出を抑えながらつくられた新しいアルミ地金のことです。
| 種類 | 特徴 | CO₂削減効果 |
|---|---|---|
| 通常のアルミ | 火力発電なども含めた電力で製錬 | ― |
| リサイクルアルミ | スクラップ再利用。エネルギー効率が高い | ◎(最大90%以上) |
| グリーンアルミ | 再エネ由来の電力で新地金を製造 | ○(通常の半分以下) |
リサイクル材の利用ももちろん重要ですが、製品仕様によってはどうしても新地金が必要なケース(例:薄板のような高精度部材)があります。そうしたときに、「新地金でありながら環境負荷が小さい」という特徴をもつグリーンアルミは、調達先のCO₂排出量を重視する企業にとって有力な選択肢として注目されています。
「再エネで作ったアルミは、どの商品に入っているの?」
この疑問に答えるのがマスバランス方式です。
工場内で使う原料全体のうち、グリーン地金の使用量を“帳簿上”で正確に管理し、その環境価値を特定の製品に割り当てる仕組み。
たとえるなら、ひとつの蛇口(製品)に「再エネの水(グリーン地金)」を優先的に流すように見せつつ、水源では混ざっている――ただし使用量の記録は厳密で、第三者保証も付与される、といったイメージです。
この方式はプラスチック・化学分野では一般化しており、環境認証やESG評価でも認められています。
これまでのグリーンアルミは、個別契約・用途限定の“特注品”でした。
それが、UACJの今回の動きによって、カタログから選べる“汎用品”へと進化することとなります。
これには、次のような意味があります。
“選べる脱炭素材”の一般化は、企業の持続可能なものづくりにとって追い風と言えるでしょう。
もちろん、課題もあります。
こうした課題は、「本気で脱炭素調達に取り組むなら、いずれ必ず直面する壁」でもあります。だからこそ、「まだ少数派のうちに動くこと」が、脱炭素素材をめぐる調達や開示での余裕を生み、将来の対応力に直結していくかもしれません。
UACJによる今回のグリーンアルミ薄板の一般販売は、“特注品”から“汎用品”へという大きな転換点を示しています。
アルミという、生活のあらゆる場所に使われる素材だからこそ、調達と開示の双方から脱炭素の具体策を考えるきっかけになるのではないでしょうか。
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本日もお読みいただき、ありがとうございました。
それではまた、次回のブログで。
執筆担当:川上 佳子
代表取締役 福島 隆史
公認会計士。2008年、SusTBを設立。企業の自主的かつ健全な情報開示をサポート。
川上 佳子
中小企業診断士。銀行、シンクタンク勤務を経て2002年より上場企業の情報開示を支援。