この記事の3つのポイント
ペットボトルでは、飲み終えた容器を回収して再びペットボトルにする「ボトルtoボトル」リサイクルが徐々に浸透してきました。では、衣料品ではどうでしょうか。
「服to服」のリサイクルは、実現が極めて難しいのが現実です。混紡素材や化学染料、加工技術の多様さにより、回収された衣料を再び均質な原料に戻すのが困難だからです。
それでも、政策は前に進んでいます。欧州連合(EU)は2024年7月にエコデザイン規則(ESPR)を発効し、製品の情報を追跡可能にする「デジタル製品パスポート(DPP)」の段階的導入を決めました。日本でも2024年6月、経済産業省が「繊維製品における資源循環ロードマップ」を公表し、リサイクルしやすい設計や環境負荷の小さい素材の使用を国内規格として整備する方針を打ち出しています。
技術的に難しくても、「衣料品を循環させる」ことは、企業にとって避けて通れない要請となりつつあります。
こうした制度の動きを背景に、ZARAやH&Mなど多くのブランドは近年、店舗に衣料回収ボックスを設置するなど、消費者の行動を後押しする工夫を進めています。これらは、回収の場が“日常の中にある”という点で、大きな一歩です。
ただ、店舗に「持ってきていただく」だけでは限界もあります。たとえば、わざわざ来店するきっかけがない、服を忘れてしまうなど、生活の中で回収機会を逃してしまうことも少なくありません。
ラストワンマイルの課題に対しては、「置き配」が一つの解として急速に広がりつつあります。国土交通省も対面受け取りの原則を見直し、再配達削減に向けた動きが進んでいます。しかし、衣料品については、サイズ交換や品質確認の必要性、盗難の不安などから、置き配には抵抗を感じる人も少なくありません。
そこで注目したいのが、ユニクロの「店舗配送」です。
この仕組みは、ラストワンマイルの効率化という物流上の課題を補完するだけでなく、同時に消費者の玄関先を“資源循環の入口”に変えるという、一石二鳥のアプローチとなる可能性があります。
と、このように申し上げる理由は…
私自身が先日、この店舗配送を体験したからなのです。
オンライン注文した商品を、近隣のユニクロ店舗のスタッフの方が届けてくださったのですが、その際、スタッフさんからこのような声かけをいただきました。
「配達した衣類を梱包していた段ボールをこの場で回収できますよ」
「ユニクロやGUで購入された不要な衣料の回収も、この機会にどうぞ」
これはつまり、“届ける”というプロセスがそのまま“回収を呼びかける”接点になっているということ。
“店舗で待つ”のではなく、“玄関先で参加を促す”。そんな仕組みは、一見すると昔ながらのアナログにも見えますが、いまの時代だからこそ新鮮に映る試みだなと、思わず感じ入ってしまいました*。
このような仕組みは、一見アナログに見えるかもしれません。しかし、実際には複数の効果を同時に生み出しています。
- 配送距離を短縮し、CO₂排出を削減する
- 回収を同時に行うことで、リユース・リサイクル率を高める
- 消費者は自宅にいながら資源循環に参加できる
結果として、EUのDPPや日本の資源循環ロードマップが求める方向性――「循環を前提とした設計と実装」――と自然に接続されているのです。
衣料リサイクルは、技術的なハードルが多く、すぐに正解が出る分野ではありません。けれども、制度や社会の要請が明確になってきた今、どこに“循環の入口”を設けていくのかは、さまざまな業種に共通する課題になりつつあります。
ユニクロの取り組みは、「回収の仕組みを持つ」だけでなく、生活者との接点――ラストワンマイルの場面を工夫することで循環への参加を促すという、設計の視点が感じられるものでした。
ラストワンマイルという言葉を、もし“届けるコスト”ではなく“つながる機会”として捉え直してみたら。
わたしたちの現場にも、あたらしい循環のかたちが見えてくるかもしれません。
今週もお読みいただき、ありがとうございました。
それではまた、来週のブログで。
執筆担当:川上 佳子
*2025年8月22日時点ではユニクロのホームページ等にこうしたサービスについての言及はありませんで、もしかすると私が利用した店舗限定のサービス、あるいは試験導入中の取り組みなのかもしれませんが――いずれにしても、可能性のあるアプローチだと感じた次第です。
代表取締役 福島 隆史
公認会計士。2008年、SusTBを設立。企業の自主的かつ健全な情報開示をサポート。
川上 佳子
中小企業診断士。銀行、シンクタンク勤務を経て2002年より上場企業の情報開示を支援。