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パーム油と品質、その“二つの信頼”をどう守るか――ポッキーリニューアルの背景にあったかもしれないもう一つの意図を考える

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この記事の3つのポイント

  • 2025年8月に発表されたポッキーのリニューアルで、味覚や食感の進化に加え、原料・製法の見直しが示された
  • 同年末までにRSPO認証パーム油100%を目指すグリコのサステナ戦略とリニューアルとの接点が推測される
  • ポッキーのリニューアルは、品質と持続可能な調達という“二つの信頼”の両立に向けた挑戦として読む余地がある

おいしさの裏に、何がある?

グリコさんの「「ポッキーチョコレート」と「ポッキー極細」が、10年ぶりに刷新されるとの発表がありました。

参考記事:
グリコのポッキーを10年ぶりリニューアル 9月発売、食感に変化(日経電子版、2025年8月20日)

 

記事によれば「チョコレートのカカオを30種類以上の候補から選び直し、シナモンやフルーツのような香りの複数の品種を採用」「プレッツェル部分には全粒粉を使用することで味わいや食感に変化」とのことですが――

もしかすると今回のリニューアル、実はそれだけでは語りきれない側面があるかもしれません。

 

私がそう考える理由は、2025年末が、同社の『使用するパーム油を100%RSPO認証原料に切り替える』というサステナビリティ目標の期限である*1 という事実にあります。

タイミングの一致をふまえると、今回のリニューアルはおいしさの進化だけでなく、企業としての持続可能性への取り組みとも何らかの接点があった可能性がある――そんな推測も成り立つのではないでしょうか。

 

リニューアルのポイント:おいしさと安心

リリース*2によれば、今回のリニューアルでは「カカオの素材としての味わいを生かす」進化がなされ、プレッツェルには「国産全粒粉や発酵バターを新たに使用」することで、食感と香ばしさが向上するそうです。

さらに、使用素材を一から考え直すことで「よりシンプルな設計」を実現し、ブランドメッセージとして「“Share happiness!~分かち合うって、いいね~”」や、「これからの持続的な『Share happiness!』を目指したい」との言葉が添えられるなど、商品づくりそのものが“持続可能なもの”へと進化している印象を受けます。

 

パーム油とは何か、なぜ課題なのか

ここで一度、パーム油について簡単に整理しておきましょう。

パーム油はアブラヤシから採れる植物油で、食品、化粧品、洗剤など広範囲に使われています。チョコレートの口どけや安定性を高めるため、ポッキーのようなチョコレート菓子にも広く使用されています。

一方でその生産過程では、東南アジアや南米などでの森林伐採や泥炭地開発、さらには児童労働や土地収奪といった深刻な環境・社会問題が指摘されてきました。

この課題に国際的に対応する仕組みが「RSPO認証(持続可能なパーム油のための円卓会議)」です。
これは、森林破壊の防止、生物多様性の保護、労働者の権利尊重などの基準を満たしたパーム油を「認証済み」として認定する仕組みで、企業が責任ある調達を進める上でのスタンダードとなりつつあります。

 

グリコのサステナビリティ戦略とポッキーの位置づけ

グリコさんは2019年にRSPOに加盟し、2025年末までにグループ全体で使用するパーム油を100%RSPO認証原料に切り替えると表明しています。

この目標に向けて、2021年にはすでにポッキーやビスコといった主力製品で認証油の使用を開始しており、段階的な導入が進んでいたと考えられます。

そうした文脈を踏まえると、2025年のリニューアルは単なる味の改善にとどまらず、RSPO対応の集大成的な側面も持っていた可能性が見えてきます。

特に、「原料のシンプル化」「製法の抜本的な見直し」は、新しい油脂(たとえばRSPO認証油)を前提にした構造設計だったのではないかとの推測も可能になる——そのように考えます。

 

食感の変化と“おいしさの維持”を両立するために

RSPO認証パーム油は、従来のパーム油と化学的には大きく変わりませんが、農園や精製方法の違いにより、微妙な融点や粘度の差が生じることがあります。そのため、一般論としてチョコレートの口どけやコーティングの厚みに影響が出ないよう、配合やテンパリング等の微調整が求められる場合があります。

今回のポッキーリニューアルに関するリリースには、そうした“調整”と相性のよい内容(原料を一から見直すことやカカオ設計の刷新、独自製法の採用)が表現されていた。深読みかもしれないが、これらは「おいしさを進化させる」工夫であると同時に、新しい原料採用に伴う物性差をカバーする対応でもあったのではないか――と読むことができます。

 

海外企業の例から見えること

RSPO認証パーム油の導入に伴う食感変化とその対応は、グリコさんに限った話ではありません。

たとえばNestléは、キットカットにおいて認証油への移行にあたり、油脂ブレンドやテンパリングの調整で“サクサク感”を維持していると報じられてきました。
また、Mondelez(オレオ)は、クリーム層の滑らかさの変化に対応するため、植物油脂の組み合わせを変更するなどの工夫をしています。

こうした事例と照らすと、ポッキーのリニューアルでも同様に「おいしさ」と「持続可能性」を両立させる工夫がなされていたと考えるのは、十分に自然な解釈と言えるのではないでしょうか。

 

まとめ:見えない部分での両立を考える

グリコがRSPO認証100%目標の達成を掲げた年に、看板商品であるポッキーの全面リニューアルが行われた――その偶然ともいえる重なりのなかに、「おいしさ」と「サステナビリティ」の両立を目指す姿勢が垣間見えるようにも思われます。

サプライチェーンの信頼性を守ることと、品質などのお客様への信頼を守ること、この2つを同時に満たすのは、実務の現場では決して容易なことではありません。

今回のポッキーリニューアルは、その両立を図った一例として読むこともできるのではないでしょうか。

 

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本日もお読みいただき、ありがとうございました。

それではまた、次回のブログで。

 

執筆担当:川上 佳子


*1 Glicoグループ「CSRレポート2025」p.98

パーム油調達の取り組み

2019年にRSPO(Roundtable on Sustainable Palm Oil持続可能なパーム油のための円卓会議)に加盟し、RSPO認証を受けた パーム油の購⼊を推進しています。2025年末までに国内および海外のGlicoグループ⼯場で⽣産する商品に使⽤しているパーム 油脂使⽤原料は全て同認証を受けたものとなる予定です。

 

*2   江崎グリコ株式会社リリース『「ポッキーチョコレート」「ポッキー極細」が 10 年ぶりにリニューアル発売 選び抜かれた素材を活かしたおいしさに』(2025年8月20日)

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