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「栄養」は次のESGテーマになるか――第2回:子ども向けマーケティング規制と飲料・アルコール業界への影響

人的資本開示 / 健康経営 / 勉強用(初学者様向け)

この記事の3つのポイント

  • 子ども向け食品・飲料広告の規制強化が世界的に進展し、企業の対応不足がATNI評価にも影響
  • 清涼飲料メーカーは製品ポートフォリオ改善に加え、広告基準の透明化が信頼性向上の鍵に
  • アルコール業界でも健康志向や自主規制が進み、「健康的製品」への転換が参考視点に

 

第1回では、食品企業の栄養改善を評価する国際的な非営利組織ATNI(Access to Nutrition Initiative)について、その概要や最新評価結果をご紹介しました。

第2回となる今回は、ATNIが特に重視している「子ども向けマーケティング規制」の動向と、それが飲料業界やアルコール業界にどのような影響を及ぼすのかについて掘り下げていきます。

 

子ども向けマーケティングの規制が強化される理由

近年、小児肥満や生活習慣病の急増を背景に、国際的に子どもを対象にした食品・飲料のマーケティングに対する批判が高まっています。

世界保健機関(WHO)は、子ども向けの不健康な食品・飲料のマーケティングを規制する新たなガイドラインを2023年に発表しました。特にデジタル媒体、SNS、インフルエンサーを用いた広告が厳しく批判され、加盟各国に法規制の導入を促しています(出典:WHO「Guideline: Policies to protect children from the harmful impact of food marketing」2023)。

ATNIによると、2024年時点で評価対象企業30社の中で、18歳未満の子どもに対し不健康な食品のマーケティングを全面的に禁止する包括的ポリシーを導入している企業は一社もありません。

一部の企業が「16歳以上に引き上げる」「健康な製品のみ広告する」など自主規制を進めているものの、国際基準には遠く及ばないのが現状です(出典:ATNI「Global Access to Nutrition Index 2024」報告書)。

 

飲料業界への具体的影響――清涼飲料メーカーの課題

子ども向けマーケティング規制は特に清涼飲料メーカーにとって大きな課題となっています。炭酸飲料や甘味飲料は子どもに人気があり、デジタルメディアやテレビCMでの露出が非常に多い製品群です。

実際、ATNIの2024年評価では、清涼飲料主体の企業のスコアは軒並み低調でした。例えば、ペプシコやコカ・コーラは砂糖削減や無糖・低糖飲料へのシフトを進めていますが、製品構成上の課題から依然として評価が伸び悩んでいます(出典:ATNI 2024報告書)。

このため、製品ポートフォリオそのものの改善が引き続き大きな課題となります。
また一方で、マーケティングの対象年齢や広告媒体に関する自主基準を整備し、その内容を投資家に分かりやすく伝えることも、企業の信頼性を高める工夫の一つになるとは思われます。

 

アルコール業界への波及――栄養ではないが「健康」評価へ

アルコール業界はATNIの直接評価対象ではありませんが、健康リスクを背景としたマーケティング規制という点では類似した課題を抱えています。

欧州やアジアの一部ではすでにアルコール広告の規制強化が始まっており、未成年者向けマーケティングを自主的に禁止する企業も増えています。実際に、ビール大手各社は若年層への広告露出を抑えるための自主規制を導入しています(出典:International Alliance for Responsible Drinking(国際責任ある飲酒連盟)の報告書)。

さらに、消費者の健康志向が高まる中、アルコール業界は低アルコール飲料やノンアルコール製品のラインナップ拡充、成分表示の透明化といった対応が求められています。ATNIが食品業界で打ち出している「健康的な製品」への転換という考え方は、直接的にではなくとも、アルコール業界の動き方にも参考になり得る視点と言えそうです。

 

さまざまな業界に影響し得る視点

今回取り上げた子ども向けマーケティング規制や健康志向へのシフトは、食品・飲料業界にとどまらず、人的資本や企業ブランド、レピュテーションなど、さまざまな業界で課題となり得るテーマです。

ただでさえお忙しいサステナビリティ担当者さまには、日々の業務に加えて、さらに考えるべきことが増えるように感じられるかもしれず、恐縮ですが…
「健康」や「栄養」という新しいESG評価軸が、御社のマーケティング施策や製品戦略とどのように結びついているか、ぜひ一度、自社の取り組みと関連付けて考えるきっかけにしていただけましたら幸いです。

 

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本シリーズ最終回となる第3回では、ATNI評価を活用して投資家やNGOが企業にどのように働きかけているのかを解説してまいります。

特に、ShareActionやGHAIのようにATNIのデータを積極的に引用する動きがある一方で、ICCRの人工甘味料に関する株主提案のように別の科学的根拠を基盤としつつATNIの課題意識と重なる事例も見られます。こうした多様なプレッシャーがどのように企業に波及しているのか、具体的な事例を交えて考えていきます。

 

それではまた、次回のブログで。

 

執筆担当:川上 佳子

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