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越境する体験デザイン②――“おにぎり”が再定義する、マスと専門の境界 :境界を超える(3)

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この記事の3つのポイント

  • プレミアムおにぎりの登場は「値上げ」ではなく「存在の再定義」
  • コンビニが“どんな会社に見られたいか”を棚で語りはじめている
  • IRやサステナでも「ポジショニング」の設計が価値説明のカギになる

何の“境界”が動いたのか?

最近、朝のコンビニレジ付近で、ちょっと迷ってしまう瞬間が増えました。

同じ「おにぎり」でも、そこに並ぶのは――産地を名乗る米、香りまで想像させる海苔、具材の由来や監修ストーリー。気づけば、コンビニの棚に専門店の文脈が静かに入り込んでいます。

これは単なる値上げではなく、いわば「参照枠(リファレンス)の再定義」ともいえるものではないでしょうか。

これまでのコンビニのおにぎりにとって、比較対象は「菓子パン」や「カップ麺」
そして、購買をうながすのは「100円セール」であったりしました。

ですが今、目の前で起きているのは、「駅ナカのむすび専門店」「季節の具材を丁寧に使う惣菜店」との土俵替え。価格の真偽よりも先に、「どんな存在として見られたいか」という意思が、棚の物語に表れはじめている――このようにとらえると、たくさんのことが腑に落ちてきます。

 

「安く、早く、どこでも」から、「ちゃんとおいしく、すぐそばで」。

プレミアムおにぎりは、マス商品と専門店の境界線をまたいだ最初の旗印です。
価格ではなく、“存在の定義”で勝負するフェーズに入ったのだと感じます。

 

境界①:マス × 専門店 ―― 比較される「枠」を動かす

参照枠がずれると、同じ300円でも景色が変わります。
軽食コーナーの中では“高い”。けれど、専門店の作法(米の炊き分け、海苔の香り、具材の厚み)が語られた瞬間、それは“納得”に変わる。
「何と比べられるか」を先に設計すること――それがポジショニングの本質です。

ここで鍵になるのが、「専門店品質 × 即時性 × 近接性」という三拍子。
専門店は“行く価値”を積み上げてきました。対してコンビニは“いつでも手が届く”を磨いてきた。プレミアムおにぎりは、その二つを縦に足し算した存在ではないでしょうか。

 

境界②:商品 × ブランド――“高級”から“約束”へ

単なる高価格帯商品ではなく、「なぜこれが棚にあるのか」「なぜこれを手に取るべきなのか」が物語として編み込まれているか。
ここで注目したいのは、監修・認証・産地表示などの情報が、“ブランドの一貫性”として機能し始めている点です。

たとえば、季節ごとの具材や産地が変わっても、それが、偶然ではなく「選ばれた理由」として語られています。継続的に更新される“こだわり”が、「この会社が届けたい価値は何か」という企業の姿勢まで見せるようになってきました*1

単発のキャンペーンや流行りの味ではなく、ブランドとしての積み重ね。
「またこの棚で会える」と思える商品は、単価以上の信頼を生みます。

 

境界③:価格 × 存在――数字ではなく立ち位置で記憶される

価格は、価値の絶対的な証明ではありません。
むしろ、「高い/安い」は、“何と比べているか”によって変わる相対的な感覚です。

プレミアムおにぎりが直面するのは、「300円は高い」ではなく、“どんな存在として見られているか”の壁。
そしてこの課題は、企業のIR・サステナビリティ開示にもそのまま当てはまります。

たとえば、「体験価値(x軸)×供給の強さ(y軸)」という2軸で、自社と競合、そして目指すブランドの位置づけを図にしてみる。
数字を並べる前に、“どう見られたいか”を定義する。
そんな図がひとつあるだけで、企業の“棚の立ち位置”は格段に伝わりやすくなります。

語るべきは、「いくらで提供するか」ではなく、「どんな会社として選ばれるのか」。
(IR資料の言葉選びや、KPIの出し方にもつながりそうな話ですね)

 

 

境界を越える語り方へ

おにぎりは、境界を越えていきました。
マスと専門店、流通と料理、包材と味わい――これまで別々の世界で語られてきた要素が、いま、ひとつの商品に重なり合っています。

こうした変化を前にしたとき、企業としてどう語るか。
“安い・早い・どこでも”という言葉ではもう伝わらない時代に、どんな価値軸で見られたいのかを自ら定義し、それにふさわしい言葉と構造で語ること。

それが、企業としての「棚の取り方」につながっていくのではないでしょうか。

 

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本日もお読みいただき、ありがとうございました。

それではまた、次回のブログで。

 

執筆担当:川上 佳子


*1 このあたりの話は、東洋経済オンラインの記事「900万個のおむすびが3週間で売れた!ファミマおむすび「大谷翔平キャンペーン」を成功に導いた緻密な計算式とは?」に詳しいです。

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