本日・7月24日は 「テレワーク・デイ」だそうです。
2020年に開催(の予定)となっていた東京オリンピックにあわせ、予想される交通混雑の緩和を目的に提唱されたのだとか。
そういえば、パリオリンピックの開会式ももうすぐですね。パリでも今、テレワークの推奨に厳しい交通規制に…となっているのだそうです。
ところで。
テレワークを含む「柔軟な働き⽅の促進」は、昨日(2024年7月23日)に開催された「第12回 健康投資ワーキンググループ」事務局資料の中でも、今年度施策のひとつに採り上げられています。
考え方としては、次のように説明されていました。(「事由を問わない」がポイントなのですね)
ICT環境が急速に変化し、新たな働き⽅が広まる中で、多様な従業員が⼼⾝ともに健⼤規模康に働ける環境整備という観点から、事由を問わない在宅勤務・テレワークの導⼊状況を含め、柔軟な働き⽅を確保するための企業の取組を評価したい(従来は育児、介護や私病といった何らかの事由がある従業員を対象とした在宅勤務等の整備状況を各設問で評価していた)。
出典:「第12回 健康投資ワーキンググループ」事務局資料p22
調査票は、Q45「適切な働き方の実現に向けた取り組み」に、「c. 柔軟な働き方の実現」が新設され、具体的な施策例(選択肢)が追加されることになるようです。
■ 変更前=前年度(令和5年度)の調査票より:
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■ 変更後=今年度(令和6年度)の調査票(素案)より:
さて。
事務局資料には特別とりあげられていませんでしたが、個人的には、今年度(令和6年度)の調査票(素案)は、上述のQ44に続く「Q44-SQ1」と「Q45」に、柔軟な働き方を許容する企業風土をつくるための工夫が盛り込まれていると感じました。
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柔軟な働き方を「許容する企業風土」――これはなかなか難しい問題で、制度を導入すれば解決するわけではないということは、皆さまよくご承知のことと存じます。。
たとえば、インターネット検索で「在宅勤務」のあとにスペースを入れると、関連ワードの上位に「ずるい」が出てきたりするのです…こんなふうに↓
育休中は人員補充もなく、業務の負担がこちらにかかり、子なし社員はいつだって子あり社員の負担を強いられてきました。ずるいと思うんです。
出典:大手小町「【お悩み相談】子どもがいるから在宅勤務ってずるくないですか?」
たとえ一個人としては子育て中(あるいはその他の事情がある)同僚を応援したい気持ちがあったとしても、現実問題として、恒常的な人員不足のなか業務の負担が降りかかり続けるとしたら。しかも、それに異を唱えることはできなかったり、「助けて当然」と言われるばかりで何のフォローもないとしたら、こうした不満が出るのも無理はないのかもしれません。
一方、在宅勤務をする人のほうも、こんなふうに見られているだろう/見られているかもしれないと思うからこそ、また、そうした中で人事評価がマイナスになるのではとの不安も大きくなってしまって。
結果、プレゼンスを発揮しよう(あるいは「発揮しなければならない」)と思うあまり、働きすぎてしまうということが起きがちです。
では、こうした問題が起きてしまいがちな状況を「柔軟な働き方を許容する企業風土」へと変えていくにはどうすれば良いのか――そのヒントが、今年度の調査票(素案)にはあったように、私は思いました。
たとえば、Q45。
選択肢9に、「育休取得者の同僚などに手当を支給」とあります。
用途が“育児と就業の両立支援”に限られているところに課題があるといわれればそうですが、ともあれ、「支援する人」のほうもフォローする/感謝を伝える/労に報いるしくみを取り入れる、というのはとても現実的かつ実現可能な解決策のひとつと考えます。
そして、Q44-SQ1(新設)。
こちらには、在宅勤務やテレワークをしている人が、(プレゼンスを見せようと)「働きすぎて」しまったり、同僚とのコミュニケーション不足から人間関係や評価などでさまざまな問題が起きたり悩んでしまったり、などの状況を改善するための措置が含まれていました。
もちろん、どの選択肢も“これだけやればOK” “これが正解”というものではありませんし、開示の面からいえば(当然ながら)やっていないことは書けないことは承知しておりますが…それでも今回のブログが、今後の取り組みや開示にあたり少しでもご参考となりましたら幸いです。
最後に、「柔軟な働き方を許容する企業風土」を作ることを課題ととらえ、取り組みを進めている企業さまの開示事例をご紹介いたします。
トヨタ自動車「サステナビリティデータブック2023」(2024年7月24日閲覧) p65には、女性活躍推進法に基づく行動計画が紹介されています。
その中で同社さんは、「在宅勤務・テレワーク制度の導入・拡大を進めてきたが、活用については途上」と言い切っています。 そして、「育児・介護等の事由の有無に関わらず活用できる、在宅勤務・テレワークの利用者数」に数値目標を掲げ、取り組みのひとつに“在宅・テレワークがハンデにならない組織風土づくり”を挙げておられるのが、他にはない部分と感じました。
ちなみに、同サステナビリティデータブックのなかで「柔軟」をキーワード検索していただくと、今年度の「健康経営」調査票(素案)が目指す方向に沿ったかたちの取り組みや考えかたを見ることができますので、よろしければこちらもお試しください。
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今回もお読みいただき、ありがとうございました。
それではまた、次回のブログで。
執筆担当:川上 佳子
代表取締役 福島 隆史
公認会計士。2008年、SusTBを設立。企業の自主的かつ健全な情報開示をサポート。
川上 佳子
中小企業診断士。銀行、シンクタンク勤務を経て2002年より上場企業の情報開示を支援。