2025年8月3日、広島市に新たな路面電車路線「駅前大橋線」が開業しました。
この新たな路線は、1999年の公共交通基本計画から実に25年かけて実現されたもので、広島市が長年かけて描いてきた持続可能な都市構想の集大成とも言えます。
(ご参考記事)
広島の路面電車、新線開業 高架で駅乗り入れは全国初(日経電子版、2025年8月4日)
この話題は、広島市が
という都市であることを考えあわせると、一層興味深いものとなります。
広島市が公共交通を強化するという選択は、単なる利便性の向上にとどまらず、企業依存からの“静かな距離の取り方”のようにも思われるからです。
広島市は、駅前大橋線という新しい公共交通インフラを都市の軸に据えることにより、自動車以外の選択肢を増やし、結果として都市の強靭性を高めようとしている可能性があります。
もしもそうであるならば、これは自動車産業の重要性を否定するのではなく、よりバランスの取れた都市構造を目指す取り組みであるとも言えそうです。
なお、こうした公共交通整備は行政や広島電鉄、JR西日本が主体となり進められているものであり、マツダは直接的に資金や技術支援をしているわけではありません。
ですが、マツダは別の形で地域の持続可能性向上に寄与しています。たとえばSDGs推進活動や高齢者向けモビリティ支援技術の提供など、企業独自の強みを活かした地域貢献を行っています。また、広島市の新交通システム「アストラムライン」を運営する広島高速交通にはマツダも出資していたとの記録があります*。
企業が直接の主導者ではなくとも都市インフラの意思決定プロセスに関与し、地域における社会的責任を果たすモデルとなっていた(なっている)可能性が考えられます。
一方、静岡県裾野市ではトヨタ自動車が主導する「ウーブン・シティ」が今年9月に開業予定であると報じられています。
「ウーブン・シティ」は企業が自ら新しい都市のあり方を模索するプロジェクトであり、企業主導の取り組みを行政が支援し、地域と共創するモデルとして注目されています。
(ご参考記事)
トヨタ「ウーブン・シティ」9月25日開業 静岡・裾野、360人入居(日経電子版、2025年8月4日)
裾野市は行政としてカーボンニュートラル宣言を行い、ウーブン・シティを地域活性化のチャンスと位置づけています。
具体的には、駅周辺の再開発や自動運転・MaaSなど先進技術の地域実装を積極的に進め、地域の移動課題解決や経済活性化への活用を目指しています。また、住民との継続的な対話を通じて、先進的な技術都市としての裾野市の魅力を高め、地域の将来像を住民参加型で構築しています。
広島市のように行政主導で『企業依存からマイルドに脱却する都市戦略』と、裾野市のように『企業主導都市構想を行政が支援し地域と共創する』という二つのモデル――これらを比較すると、企業城下町が直面する課題や、未来都市構想と地域との関係性について多面的な示唆が得られるように思います。
企業と行政がそれぞれの強みを活かし、補完的に連携しながら都市の持続可能性を追求していく。広島市と裾野市の両事例は、そんな都市戦略の多様な可能性を示しているのかもしれません。
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8月4日時点で、偶然目に入った2つの記事をもとに、本日はサステナブルな都市戦略について少し考えをめぐらせてみました。
お読みいただき、ありがとうございました。
それではまた、次回のブログで。
執筆担当:川上 佳子
*2013年時点ではマツダが3%出資していたとの記事がありますが、現在は不明です。
代表取締役 福島 隆史
公認会計士。2008年、SusTBを設立。企業の自主的かつ健全な情報開示をサポート。
川上 佳子
中小企業診断士。銀行、シンクタンク勤務を経て2002年より上場企業の情報開示を支援。