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見えにくい不平等こそがサステナビリティを考える出発点に──「水の日」に考えるトイレの行列問題とSDGsゴール6

ニュース / 勉強用(初学者様向け)

平等と公平──その違いを、トイレから考える

「平等(Equality)」と「公平(Equity)」は違う—―という考え方は、サステナビリティ担当者さまならばきっと、何度もお聞きになったことがあるのではと存じます。

Equality(平等)は、すべての人に同じ条件を提供すること。
Equity(公平)は、それぞれの立場やニーズに応じて適切な支援や配慮を行うこと

――定義は、聞いたことがある。
でも、それって具体的にはどんなことなんだろう?と思っていらっしゃる方。

この違いを考えるうえで、実は非常に身近な話題があります。
それが、トイレの混雑問題です。

 

たとえば、イベント会場や商業施設などで、女性用トイレの前だけに長い行列ができている光景を目にしたことはありませんか?

一見すると、スペースを「平等に」分けて設置されているように見えるトイレも、実際には女性の方が使用時間が長く、すべてが個室であるという構造上、同じ面積では処理能力に差が出てしまい、行列が生まれる原因となってしまう——つまり、面積の「平等」が必ずしも「公平」な使いやすさにはつながっていない問題なのです。

 

歴史が生んだ設計バイアス

こうしたトイレ問題は、長年見過ごされてきたジェンダー課題のひとつでもあります。ようやく日本政府もその是正に向けて本格的に動き始めています。

 

ご参考記事:「女性トイレの行列、政府が是正へ緊急通知 見過ごされてきた不平等」(日経電子版、2025年7月27日)

 

では、なぜ日本においてこうした格差が生じてきたのでしょうか。

歴史を振り返ると、明治から大正期にかけての近代化の中で、施設設計の多くが男性労働者を前提に進められてきました。その後、女性の社会進出が進んだにもかかわらず、当初の設計思想は見直されることなく、多くの施設に引き継がれてきました。

しかし、国際的には、避難所環境整備を定めた「スフィア基準」で男女比1対3が推奨されていますし、欧州各国では公共施設におけるトイレのジェンダー配慮設計が広く取り入れられています。

日本ではこの点、引き継がれた「アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)」が影響し、対応に遅れが出ていたのです。

 

公共と民間、双方で見られる「変化の兆し」

しかしながら、最近ではこの問題に改善の兆しが見られるようになりました。

日本政府は2025年6月の骨太の方針で「女性用トイレの利用環境改善」を初めて明記しました。
山口県萩市では、男性用トイレ1に対して女性用トイレを2つ設ける基準を定めるなど、自治体単位での先進的な取り組みも始まっています。

建築とアートで再定義されたトイレ空間

民間では、日本財団が渋谷区で展開した「THE TOKYO TOILET」プロジェクトも注目されました。

このプロジェクトでは、世界的な建築家やデザイナーが参画し、トイレをジェンダー平等やバリアフリーといった視点から再定義しました。その成果は、国内外から高く評価されました。

ローソンのアートトイレ

ローソンは1997年にコンビニ業界で初めてトイレを開放し、今では1日あたり約100万人が全国の店舗で利用しています。さらに同社は、トイレのマナー向上と清掃負荷の軽減を目的として、壁面を美しく彩るアートデザインを導入する試みを進めています。

この「アートトイレ」は一見、すべての人に同じ空間を提供しているだけのように見えますが、実際には“綺麗に使いたくなる”という心理的な働きかけを通じて、トイレに対する利用者の行動変容を促しています。結果的に、清掃やメンテナンスの負担が減少し、誰にとっても使いやすい快適な環境が生まれつつあります。

直接的にEquity(公平)を設計したわけではなくても、利用者の体験や感じ方に配慮したデザインが、結果的に多様な利用者のニーズに応える環境をつくり出すこのような取り組みは、「公平を目指すための補助線」と捉えることもできるのではないでしょうか。

 

SDGsとトイレ──先進国だからこそ見えにくい課題

最後に、SDGsのゴール6『安全な水とトイレを世界中に』について、少し視点を広げてみるきっかけになればと思います。この目標は、つい「途上国における課題」と捉えられがちかもしれませんが、今回取り上げたように、日本のような先進国にも見えにくい課題が存在しています。

こうした事例を通じて、Equality(平等)とEquity(公平)の違いに少し意識を向けてみることは、サステナビリティの考え方を身近なテーマから見つめ直すヒントになるかもしれません。

私たちの日常の中にもサステナビリティを考える入り口がたくさんあることを改めて感じさせてくれるテーマとして、本日は「水の日」にちなんだお話をさせていだきました。

 

今週もお読みいただき、ありがとうございました。

それではまた、来週のブログで。

 

執筆担当:川上 佳子

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