コーポレートガバナンス改革が“形から実質へ”と向かう中で、いま、注目されているのが「取締役会事務局(コーポレートセクレタリー)」です。
アクション・プログラム2025では、形式面の整備にとどまらない「実効性ある取締役会」の実現に向けて、この事務局機能の強化が明確に打ち出されました。
もしも今、「事務局」と聞いて、「会議資料の準備やスケジュール調整をしてくれる人たちでしょ?」と思った方がいらっしゃるとしたら――その認識、改める時が来ているかもしれません。
多くの企業さまでは、これまで、取締役会事務局は総務部門の一角として会議運営や議事録作成などの、いわば「“段取り”のプロ」として位置づけられてきました。
ですが今、取締役会事務局に求められている機能や役割はそれだけではありません。
アクション・プログラム2025では、事務局に対して次のような期待が明記されました。
また金融庁は、各社の実務担当者が課題や好事例を持ち寄って議論する場として「コーポレートガバナンス実践コンソーシアム(仮称)」の設立を打ち出しています。
ここで中心的なプレイヤーとして位置付けられているのが、まさに「事務局」なのです。
では、そんな“進化した”事務局には、実際にどんな機能が求められているのでしょうか。
若手のIR/サステナビリティ担当者の方にも関係の深そうなポイントを5つに整理してみました。
事務局は、会長や社外取締役と連携して「何を取締役会で話すべきか」を設計します。
議題が増えすぎて議論が薄くならないよう、時間配分を考えながら、重要度・戦略性に基づいて“選ぶ力”が問われます。
毎年実施される取締役会の「実効性評価(自己・第三者)」では、事務局がアンケート設計、分析、改善提案まで担うケースが増えています。
経産省の「社外取締役ガイドライン」では、事務局が社外取締役の声を丁寧に吸い上げ、改善につなげることが推奨されています。
近年、取締役会の多様性と専門性の“見える化”が求められる中で、スキルマトリックスの作成・更新は事務局の重要任務に。
単なる経歴一覧ではなく、「自社の戦略に照らしてどんなスキルが必要なのか」を整理し、指名委員会やIR部門と連携して説明責任を果たしていく役割を担います。
社外取締役にとって、企業内部の情報へのアクセスはとても重要です。
事務局は、事前資料の配布や説明会の開催、就任時のオリエンテーション、現場視察などを通じて、彼らが深く議論に参加できる環境を整えます。
取締役と経営陣、さらには社外取締役同士の情報の“つなぎ手”となるのも事務局です。
さらに、IR部門とも連携して、社外取締役が投資家と対話する場を設定するなど、ステークホルダーとのつながりを強化する動きも始まっています。
ここまで読んでいただき、「あれ、これって私の仕事にも関係あるのでは…?」と思われた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そのとおりです。
IR/サステナビリティ担当者さまが“取締役会の議題になるべきこと”を提案したり、社外取締役への情報提供を支援したりする場面は、今後確実に増えていくのではないかと考えられます。
取締役会事務局は、会社のガバナンスの“頭脳”であり、“潤滑油”でもあります。
だからこそ、IR/サステナビリティ担当者さまは、「どのような情報を、どのように伝えるか」を考えるとき、事務局との連携を意識する必要があります。
次回の取締役会を前に、まずは今、「自社の事務局はどう機能しているか?」「私の関わり方は、適切か?」と考えてみてはいかがでしょうか。
――その問いが、御社のガバナンスを動かす第一歩になるかもしれません。
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お読みいただき、ありがとうございました。
ではまた、次回のブログで。
執筆担当:川上 佳子
代表取締役 福島 隆史
公認会計士。2008年、SusTBを設立。企業の自主的かつ健全な情報開示をサポート。
川上 佳子
中小企業診断士。銀行、シンクタンク勤務を経て2002年より上場企業の情報開示を支援。