さまざまな業界が、人材不足に直面している現代。
特に海運業界では、船員のなり手確保が重要な課題となっています。
海洋国家・日本を支える船員が、このままでは足りなくなってしまう
――しかし、リクルートを進めようとすると、大きな「壁」が立ちはだかります。
なぜなら、そもそも、若者にとって船員は「遠い存在」だから。
(何しろ、接する機会、目にする機会がないので…)
また、少し知っている人には「過酷な職業」との印象を持たれている場合もあるでしょう。
長期間の船上生活、陸と隔絶され、ネット環境も十分ではない――そんなイメージが先行してしまえば、どれも若者世代からは敬遠されてしまうかもしれません。
そんなふうに難しい「船員のなり手確保」。
この問題を解決するときに、有効なのは、
職業に “憧れ” はつくれるのか?
という視点ではないでしょうか。
いきなり話が飛んだぞ?!と思われた方、すみません。
少しだけご辛抱ください。
ヨーロッパの「騎士」と言えば、皆さま、どんなイメージが浮かびますか?
中世ヨーロッパの、封建社会。
主君に忠誠を誓い、騎士道精神を体現する存在。
勇気、礼儀、名誉を重んじ、弱者の保護と貴婦人への献身を旨とする
――こんなところでしょうか。
ですが。
実は「騎士」って、登場した当時は単なる軍事的役割しか持っておらず、特に「憧れの存在」ではありませんでした。
それが時代とともに「誇りある職業」とされ、子どもたちの憧れを集める存在になっていった――そこには、明確な仕掛けがありました。
そして、この仕掛けの数々は、現代の船員リクルーティングにも使えそうだと私は思うのです。
たとえば、こんなふうに。
| 騎士のブランディング戦略 | 現代の船員ブランディングに応用するなら |
|---|---|
| 吟遊詩人や物語による英雄化 | 映像・SNSで“かっこいい船員”を描くストーリーテリング |
| 紋章や甲冑というシンボル | 制服や船内デザインで“視覚的な魅力”を演出 |
| 「神のため」「民のため」という使命 | 船員を“海の守り人”や“地球にやさしい輸送者”と再定義 |
| 騎士叙任式という儀式文化 | 船員資格の取得や就航時に“記念セレモニー”を実施 |
このブランディング戦略のチャンスは、ちょうどいま、訪れているようにも思えます。
2025年7月20日、郵船クルーズさんが満を持して就航させる新造客船「飛鳥Ⅲ」は、全室バルコニー付き、展望大浴場、LNG燃料で環境配慮も万全──まさに“海上ホテル”のようなこの船は、職業ブランディングの核に据えるにふさわしい存在に見えます。
この「飛鳥Ⅲ」を活用し、先ほどの「騎士道」からヒントを得たリクルートブランディングの施策は、(完全にジャストアイディアですが)たとえばこんなものが考えられるように思います。
なお、2025年7月21日(飛鳥Ⅲの就航翌日ですね)には、「キッザニア福岡」に、日本郵船さんのパビリオンがオープンするそうです。航海士の仕事が体験できる「船舶トレーニングセンター」になるとのことで、これも「憧れ」を生む早期リクルーティングになりそうですね!
未来に向けて人を育て、仕事の価値を再定義すること
——それは間違いなく、サステナビリティの一部です。
海のプロフェッショナルである船員を、「大変だけど、カッコいい」「使命がある」「なってみたい」と思える存在にしていく、リクルートブランディング。それは、海運業界の課題解決にとどまらず、多くの産業が直面する人材不足へのヒントになるのではと思います。
中世の騎士たちは、武力だけで尊敬されたわけではありません。
彼らの物語、象徴、儀式、使命が、多くの若者を惹きつけたのです。
いま、私たちが船員不足に対してできるのは──その“現代版ストーリー”を編み直すこと(かも)。
今回のお話が、人材戦略に悩むすべての企業さまにとって、「人が集まる職業とは何か」を考えるヒントとなりましたら幸いです。
それではまた、次回のブログで。
執筆担当:川上 佳子
代表取締役 福島 隆史
公認会計士。2008年、SusTBを設立。企業の自主的かつ健全な情報開示をサポート。
川上 佳子
中小企業診断士。銀行、シンクタンク勤務を経て2002年より上場企業の情報開示を支援。