SusTB communications サスティービー・コミュニケーションズ株式会社

未来に響くコミュニケーションレポートの企画・制作×コンサルティング

HINTサステナ情報のヒント

金融庁の「企業文化の醸成」レポート、非金融企業が活かすなら?──サステナビリティ担当者さまの視点で読み解く

サステナビリティ・ガバナンス / リスクマネジメント

2025年6月、金融庁が「健全な企業文化の醸成及びコンダクト・リスク管理態勢に関する対話結果レポート」を公表しました。サステナビリティやIRに携わる皆さまの中にも、すでに目を通された方がいらっしゃるかもしれません。

金融機関を対象としたこのレポート、読みながら「うちとはだいぶ事情が違うな…」と感じた方もいらっしゃるかもしれません。とはいえ、企業文化のあり方やその育み方について、業種や規模を超えて学べる視点もたくさん含まれています。

本日のブログでは、このレポートを“そのまま”使おうとするとハマりがちなポイント、そして“自社らしく”活かすためのヒントを、サステナビリティ担当者の目線でお伝えします。

金融庁のレポート、どこが参考になる?

レポートでは、企業文化を変えていくための5つのステップが整理されています。

・理念を言語化すること(パーパスやバリューなど)
・それを社内でしっかり発信・共有すること
・実際の行動につながるよう、制度や環境を整えること
・どれだけ浸透しているか評価すること
・改善が必要なら、繰り返し見直すこと

 

この流れは、どんな企業にとっても「文化を育てるうえで大切な観点」だと感じます。たとえば、理念を掲げっぱなしにせず、制度や行動とつなげていく姿勢。それを“数値だけで測らず”、現場の声や雰囲気も見ながら判断しようという姿勢。

特に最近、「人的資本経営」や「パーパス・ドリブン経営」の重要性が高まる中で、「言葉を行動に落とすこと」の難しさに向き合っている企業さまには、このプロセスは良いヒントになるでしょう。ただ、いくら良いプロセスであっても、自社の事情や規模、業種などを考慮せずにそのまま適用すると、「思ったように成果が出ない」ということもよくあります。次のセクションでは、その「うまくいかない理由」について少し掘り下げて考えてみます。

 

そのまま使うと、なぜ“詰まり”が起きるのか

とはいえ、このプロセスをそのまま導入してもうまくいかない…そんなケースも少なくありません。

たとえば、

・理念がふわっとしていて、現場でどう行動に変えたらよいかわからない
・トップの発信が一方通行になっていて、社員の共感がいまいち得られない
・「制度だけ作って満足」になってしまい、日常の行動に変化が起きない

といった“詰まり”が、さまざまなステップで生じます。

これは、レポートが大手金融機関を想定して書かれているからこそ起きる“前提のズレ”でもあります。

たとえば「タウンホールミーティング」や「360度評価」「社員参加型WG」など、実施のハードルが高いと感じる企業さまもあるでしょう。

また、“制度的整備”に重きを置いた視点も、比較的リソースが限られる企業にとっては、かえって距離感を生んでしまうこともあります。つまり、制度そのものは良いものであっても、自社に合った形で取り入れないと、せっかくの良い仕組みも逆効果になりかねない、ということです。

だからこそ大切なのは、「参考になる部分」と「注意が必要な部分」をしっかりと見極めることです。次に、具体的にどの部分を注意深く検討するべきかを整理してみましょう。

 

“参考になる部分”と“注意が必要な部分”を見極める

本レポートには、制度やプロセス面でのヒントがたくさん詰まっています。

特に、以下の視点は多くの企業にとって学びとなるのではないでしょうか。

・形式的な理念ではなく「自分ごと」化された理念が大切
・判断に迷ったときに立ち返る「行動の軸」として機能すること
・評価や制度ときちんと結びついていること

一方で、導入の仕方を誤ると「チェックリスト消化」「形だけのPDCA」に陥るリスクもあります。

だからこそ、担当者の皆さまが「この制度、うちに本当に合ってる?」と立ち止まって考えることが何より大切です。ただ、「じっくり考える時間や余裕がない」という声もよく耳にします。そこで、最後に「じっくり考える前に、まずはすぐに取り組める小さな一歩」をいくつかご紹介します。これらを試す中で、自社に合った制度や仕組みを考えるヒントにしていただければ幸いです。

 

サステナビリティ担当者さまが今すぐできる小さな一歩

最後に、皆さま社内で“明日からできる一歩”をいくつかご紹介します。

  • 理念を1文で言い換えてみる。「この会社、こういう考え方を大事にしてるんだよね」と、誰かに伝えるつもりで

 

  • 自社の人事評価や制度を、理念の視点で眺めてみる。「これって、理念とつながってるかな?」と問い直すだけでもOKです

 

  • 社内報やイントラで、理念にちょっと触れる投稿をしてみる。たとえば「理念×あの部署の工夫」といった身近な例を紹介するなど、小さな試みを繰り返すことで、理念と現場の距離が自然と縮まっていきます。

 

おわりに

金融庁のレポートは、たしかに金融業界向けにつくられたものですが、このように自社の環境や文化に合わせた小さな工夫を重ねることで、どんな企業でも効果的に活用できる可能性があります。

サステナビリティ担当者さまとして、「企業文化」をどう捉え、どう伝えるか。

制度を“写す”のではなく、文化を“育てる”。

そんな視点で、ぜひ一緒に取り組んでいきましょう。

(いつでもご相談くださいね!)

 

---

本日もお読みいただき、ありがとうございました。

それではまた、次回のブログで。

 

執筆担当:川上 佳子

記事一覧へ