CSRレポートを作っていたころも、サステナビリティレポートになった今も、対象読者を「すべてのステークホルダー」とされている企業さまは多いと思います。
ただ、実際の運用面で考えますと、サステナビリティレポートは近年、投資家やESG評価機関等を実質的な主要利用者層と想定して作られることが多くなっており、「投資家が欲しがる情報って何なんだろう?」とお困りのサステナビリティ担当者さまもおられるかもしれません。
本日は、そんなサステナビリティ担当者さまのお悩み解消に役立ちそうな本を2冊、ご紹介したいと思います。
1冊目としてご紹介したいのは、徳成 旨亮著「CFO思考 日本企業最大の「欠落」とその処方箋」(ダイヤモンド社)です。
えーっ!CFOのための本なんて自分には関係ないよ…というお声が聞こえてきそうですが、ご安心ください。これをすべて読むことをおすすめしているわけではありません。
今回のブログのテーマ「投資家が本当に知りたいサステナビリティ情報」を理解する上で、ぜひお読みいただきたいのは、たったの3ページ。「『サプライズのない経営』で資本コストを下げる」(p146~148)だけです。「守りのESG」開示の重要性が説かれています。
なお、p146~148を読了し、もう少しぐらいなら読めそう!と思った方は、あわせてp163~171も目を通していただくことをおすすめします。
報道などでよく目にする「投資家はESG情報になど興味はない」という言説は本当なのか?実際のところどういった意味なのか?をご理解いただく上で大変役立つ内容と存じますので。
※ご参考までに、p163~171の小見出しは下記の通りです。
- ESG経営は本当に企業価値向上につながるか?
- 企業価値と正の相関がある非財務KPIとは?
- 相関関係があっても因果関係があるとは限らない
- 非財務価値を財務価値につなげるストーリーこそが大切
(ちなみにこの部分、最近話題の「インパクト加重会計」を理解する第一歩としても有益な内容であったりもします)
2冊目としてご紹介するのは、浜辺 真紀子著「『株主との対話』ガイドブック ターゲティングからESG、海外投資家対応まで」(中央経済社)です。
p34~38で説明されている「サステナビリティ・リスク」は、1冊目でご紹介した「サプライズのない経営」の要である“守りのESG”とほぼ同義です。こちらのほうがより具体的に説明されていますので、1冊目とあわせてお読みいただくとご理解が深まるものと存じます。
と手厳しいですが、具体的に何を参考にして開示すれば良いのかもp49~で説明してくれるなど手厚い本ですので、おすすめいたします。
サステナビリティレポートは、各担当部門さまから集まった原稿や「これを書いてほしい」というリクエストをそのまま受け取って掲載すると、知らず知らずのうちに “良いことばかりの報告” になっていってしまう可能性があります。
本日お伝えした本にある「投資家やESG評価機関等が本当にほしい情報とは何か?」を知っておいていただくことは、レポートの編集にあたり、掲載用コンテンツを選別したり強弱をつけたりする際に、また、担当部門さまにご理解を得るための説明をされる際に役立つかと思います。
ご活用いただけましたら幸いです。
それではまた、次回のブログで。
執筆担当:川上 佳子
代表取締役 福島 隆史
公認会計士。2008年、SusTBを設立。企業の自主的かつ健全な情報開示をサポート。
川上 佳子
中小企業診断士。銀行、シンクタンク勤務を経て2002年より上場企業の情報開示を支援。