企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)が急速に進み、ITへの依存度が高まるにつれて、サイバーセキュリティの重要性がこれまで以上に増しています。
特に上場企業では、サイバー攻撃による情報漏洩や業務停止などのリスクを防ぐための堅牢なセキュリティ体制が求められています。
こうした状況を踏まえ、経済産業省は2025年5月、「サイバーセキュリティ人材の育成促進に向けた検討会最終取りまとめ」を公表しました。
この取りまとめでは、国家資格である情報処理安全確保支援士(登録セキスペ)の登録者数を2030年までに5万人に増やすことを目標として掲げています。
国としても今、企業がサイバーセキュリティ対策に取り組む人材をしっかりと確保し育成する必要性を認識しているのです。
しかし実は、企業においてこの目標を実現するためには乗り越えるべき「見えない壁」があります。
それは、IT部門を日常的な問い合わせ対応の負担から解放し、本来の専門的かつ高度な業務に集中できる環境を整えることです。
現在、多くの企業のIT部門では、DXの推進によって生じた日々の細かな問い合わせ対応に追われ、サイバーセキュリティのような専門性の高い分野に充分な時間とリソースを割けないという現状があります。
では、IT部門の問い合わせ業務対応を削減するにはどうすればよいのでしょうか。
カギは意外にシンプルなところにあるかもしれません。
そのヒントとなりそうなのが、パナソニック「レッツノート」の取り組みです。
パナソニックは最近、「レッツノート」の電源スイッチを従来のスライド式から、シンプルな押し下げ式のボタンに変更したのだそうです。この小さな変更によって操作方法が分かりやすくなり、従業員からの問い合わせが減少したのです。
参考記事:
日経電子版「パナソニックのレッツノート、スライド電源廃止でIT管理者の負担減」(2025年6月7日)
これはメーカーさんが工夫した事例ですが、こうした「ユーザー視点」を持つことは、現場を「自立」させ、結果的にIT部門を問い合わせ業務から解放して本来の業務に集中できる環境を整える第一歩として大いに参考になるのではないでしょうか。
IT部門が問い合わせ対応の負担から解放されると、以下のような戦略的な業務に集中できるようになります。
企業が持続的な成長を遂げるためにDXの推進、そしてサイバーセキュリティ人材の育成が重要なことは言うまでもありませんが、その実現のためには、IT部門の負担軽減も不可欠です。
統合報告書やサステナビリティレポートにおいて「DX戦略」を記載することが増えてきた今こそ、この視点を忘れないことが重要ではないでしょうか。
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本日もお読みいただき、ありがとうございました。
それではまた、次回のブログで。
執筆担当:川上 佳子
代表取締役 福島 隆史
公認会計士。2008年、SusTBを設立。企業の自主的かつ健全な情報開示をサポート。
川上 佳子
中小企業診断士。銀行、シンクタンク勤務を経て2002年より上場企業の情報開示を支援。