「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(医薬品医療機器等法)」(略称:薬機法)という名前を、ご存知でしょうか?
あまり聞きなじみのないこの法律は、医薬品や医療機器の安全性と有効性を確保し、適正な使用を促進することを目的としています。
近年のセルフメディケーション(自己治療)やデジタル技術を活用した医療の進展、さらに医薬品供給の安定性などの社会的ニーズを背景として改正され、2025年5月14日の参院本会議で可決・成立しました。
本日のブログでは、この「改正薬機法」が、企業の健康経営にどのような新たな可能性をもたらすのかについてご紹介します。
特に、企業のサステナビリティ戦略に関連が深い「データ活用」の側面に着目し、現時点で考えられる活用の可能性について整理してみました。
改正薬機法には次の重要なポイントが含まれています。
1. 一般用医薬品(OTC医薬品)のコンビニ等での販売拡大
2.デジタルセラピューティクス(治療用アプリ)の推進
これらの変更は、企業の健康経営におけるデータ活用にどのような影響をもたらす可能性があるのでしょうか。現時点でわかっていることに基づいて、考えてみました。
コンビニエンスストア等でのOTC医薬品の販売拡大により、従業員のセルフケアに関する行動が日常的にデータとして記録される仕組みが構築される可能性があると考えられます。
※ただし、こうしたデータを企業が健康管理に活用するためには、個人情報の取扱いに関する同意取得やPHR(パーソナルヘルスレコード)との連携、システム整備など、別途の取り組みが必要となります。
現時点で改正薬機法は治療用アプリを市販薬と同等に位置付ける新制度を明確に規定しているわけではありませんが、今後の制度整備や普及が進めば、企業において従業員のメンタルヘルスや生活習慣病の改善状況をリアルタイムで把握できるデータ活用が進む可能性があります。
※ただし、この実現には、従業員本人の明確な同意取得や、利用されるアプリから企業へのデータ提供を行う仕組みづくりなどの整備が必要になります。
これらのデータが適切に取得・活用された場合、以下のような健康経営への貢献が期待されるのではないでしょうか。
上記はいずれも、現時点では法改正が直接的に規定した内容ではなく、あくまで将来的に想定される可能性として私が個人的に考えたものではありますが…
今回の改正薬機法の施行を契機に、健康経営におけるデータ活用の可能性についてご検討いただく上で、なんらかのご参考としていただけましたら幸いです。
本日もお読みいただき、ありがとうございました。
それではまた、次回のブログで。
執筆担当:川上 佳子
代表取締役 福島 隆史
公認会計士。2008年、SusTBを設立。企業の自主的かつ健全な情報開示をサポート。
川上 佳子
中小企業診断士。銀行、シンクタンク勤務を経て2002年より上場企業の情報開示を支援。