2025年2月下旬、トヨタ自動車が「監査役会設置会社」から「監査等委員会設置会社」へ移行することを決議したとのニュースがありました。
トヨタ自動車は25日、監査等委員会設置会社に移行すると発表した。6月に予定する定時株主総会で承認を得て正式に移行する。現行の「監査役会設置会社」制度よりも、社外人材による経営監視機能が強化される。トヨタでは認証不正など企業統治を揺るがす事例が相次いだ。ガバナンスを向上させつつ、電気自動車(EV)など変化の激しい市場環境に対応する。
(出典:日経電子版2025年2月25日『トヨタ、監査等委員会設置会社に 経営に「社外の目」強化』)
同社はこのガバナンス体制変更について、自社のウェブメディア「トヨタイムズ」で解説しています。
そして、
トヨタイムズの当該記事「取締役会の活性化? 意思決定の迅速化? トヨタが「監査等委員会設置会社」へ移行する理由は?」には、「監査等委員会設置会社とは何か?」について、かなりわかりやすく説明されているのです。
この記事、たぶん「監査等委員会設置会社って何?実はよくわかっていないんだよね…」という方々にとってはとても良い教材だと思います!おすすめです。
とはいえ、記事を全部読んでいる時間はないよ…という方もいらっしゃるかもですので、私が考える「読みどころ」をひとつ、引用してお伝えします↓↓
総務・人事本部の東崇徳本部長は、「監査役と取締役では立場が違う。取締役会は基本的に、取締役が議論する場で、そこを監査するのが監査役。こうした役割では、監査役は発言をちゅうちょしてしまい、取締役と同等の積極的な議論参加は難しい」と説明する。
取締役会を構成するメンバー全員が「決める」当事者として参加することで、多様な視点が持ち込まれ、議論がより活発になる。これが、今回の変更に込めた狙いだ。
従来の監査役会設置会社では、取締役が経営について議論し、監査役はその様子をチェックするという構図でした。ただ、このコメントが示すように、監査役はどうしても「経営を監督する立場」ゆえに発言しづらく、取締役に比べて議論への積極的な参加が難しい状況になることが多かったのです。
一方、監査等委員会設置会社では監査等委員も取締役の一員(しかも議決権あり)ですから、取締役会の構成メンバー全員が「決定に関与する当事者」として遠慮なく意見が出せるようになる…というのが、トヨタの期待であり、監査等委員会設置会社の大きな特徴なのです。
トヨタイムズ記事を読むとわかる「監査役会設置会社との違い」を、ここでかんたんに整理しておきますね。
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「監査等委員会設置会社」への移行とは、平たく言えば「経営をチェックする人」を経営の議論と決定の輪に加えることでガバナンス(企業統治)を強化しつつ、取締役会が細かな事項ではなく戦略的な議論に専念できるようにしてスピード感も上げる、という改革なのですね。
今回はトヨタイムズの記事を通じて、監査等委員会設置会社の基本的な仕組みと従来の監査役会設置会社との違いについて解説しました。ポイントは、監査役が担っていた監督機能を取締役会内の委員会に組み込むことで、議論活性化と迅速な意思決定という二兎を追う制度変更だということです。
では、このようなガバナンス体制の変更があった場合、統合報告書やサステナビリティレポート等の開示では、どのような点を訴求すればよいのでしょうか?
次回は、IR担当者・サステナビリティ担当者様がこの制度変更を実務でどう活かせるか? について具体的なポイントを見ていきたいと思います。
どうぞお楽しみに!
それではまた、次回のブログで。
執筆担当:川上 佳子
代表取締役 福島 隆史
公認会計士。2008年、SusTBを設立。企業の自主的かつ健全な情報開示をサポート。
川上 佳子
中小企業診断士。銀行、シンクタンク勤務を経て2002年より上場企業の情報開示を支援。