社員エンゲージメント向上——、最近よく聞くフレーズですね。
エンゲージメント調査を実施し、その結果を統合報告書や有価証券報告書で開示する企業も増えています。
さて。従業員エンゲージメントが高い、と聞くと、あなたはどのようなイメージを思い描きますか?
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多くの方はこの写真のようなイメージを思い浮かべるのではないでしょうか↓↓
でも、私のイメージは…こんな感じです。
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(トレーニングジム/パーソナルトレーニング)
私は、社員の成長を支援できる企業って、ある意味、スポーツジムのようなところがあるのではないかと思っているのです。
試しに、「会社はジムで、社員はその会員たち」だと考えてみてください。
会員になったきっかけは、さまざまあるでしょう。筋トレで体を鍛えたいとか、体力をつけられるようになりたいとか。
ですが、もしもジムのオーナーが「うちのジムを愛して通い続けてほしい」と願うあまり、「うちのジムを好きになってください!」「楽しく通えます!」とばかり言っていて、会員一人ひとりの目的や、筋力アップや体力向上には無関心だったら…? それはちょっとおかしいですよね。
でも、トレーナーが記録更新の手助けをしてくれて、自分の成長を実感できるジムなら、お客さんは夢中になって通うはずです。
会社と社員の関係も同じ、と考えてみてはいかがでしょうか。
そうです。社員のエンゲージメント(仕事への熱意や愛着)を高めるカギは、実は「会社への愛着を持たせる」ことよりも、「社員自身の成長意欲」を刺激し、一人ひとりの望みやゴールに合った成長を手助けすることにあるのです。
新しいことに挑戦して自分の成長を感じられたとき、人は「もっと頑張ろう!」と前向きな気持ちになります。難しかった仕事をやり遂げたり、新しいスキルを身につけたりすると、自信がついて次への意欲がわいてきます。逆に、毎日がマンネリでただ同じ業務の繰り返しだと、なかなかやる気は続きません。
たとえば、入社5年目のAさんは、新しいプロジェクトに挑戦して何とか成功に導いたとき、上司から「よくやった!成長したな」と認められて大きな達成感を得ました。それが次の挑戦への意欲につながったと言います。逆に、以前にいくら頑張っても周囲に評価されなかったときは、「自分の努力って無駄なのかな…」とモチベーションが下がってしまったそうです。このように、頑張りを正当に評価してもらえるかどうかは、社員の成長意欲に直結します。実際、中堅社員の多くは、仕事に慣れて挑戦の機会が減って成長が停滞すると感じると、より成長できる環境を求めて転職まで考えてしまうのです。
出世や昇給というと「管理職にならなければ難しい」と思いがちですが、NTT西日本さんはその常識を覆そうとしているようです。
日経の記事によれば、同社が検討中の「トップガン」という評価制度では、特定の分野で卓越したスキルを持つ若手・中堅社員に「トップガン」(または「けん引者」)の称号を与え、管理職と同等の待遇(給与など)を受けられる仕組みになっています。つまり、会社は「管理職になる以外にも成長の道がある」と示しているわけです。
この制度が示すのは、専門スキルを極めた人にもスポットライトを当てる会社の姿勢です。
自分の得意分野でトップを目指せるとなれば、「もっとスキルを磨こう」「新しいことに挑戦しよう」という意欲が湧いてきますよね。NTT西日本がこの制度を検討する狙いもまさにそこにあって、社員のやる気を引き出し、優秀な人材の流出を防ぐことにあります。
女性管理職比率の向上が求められていることもあり、人的資本に関する開示は「リーダーシップ」の育成に重点が置かれがちですが、実際にはリーダーだけがキャリアのゴールではありません。
先ほどスポーツジムのたとえで申し上げた「一人ひとりの望みやゴールに合った成長を手助けする」ことができれば、社員の意欲はより高まります。
では、成長意欲にあふれる社員が増えると会社にはどんな良いことがあるのでしょうか。実は、やる気に満ちた社員が主体的に動く職場ほど、新しいアイデアや改善提案が活発に生まれます。エンゲージメントの高い社員は自分のアイデアを積極的に発信し、イノベーションを促進する傾向があります。
自律的に成長する社員が増えれば、企業全体の競争力もぐんと上がるでしょう。現場から新しいサービスが生まれたり業務効率が上がったりと、その効果は会社の成長にも直結していくでしょう。
先ほどご紹介した「トップガン」のような制度は、まさに社員の自律的な成長を後押しする仕組みです。社員一人ひとりが自分なりの挑戦を続け、その成果が正当に評価されれば、組織には活気とアイデアがあふれます。それが積み重なってイノベーションとなり、ひいては業績向上や市場での優位性につながっていくのではないでしょうか、
社員のエンゲージメントを高めるには、社員に会社を「好きになってもらう」ことより、社員自身が「もっと成長したい!」と思える環境を作ることが重要です。エンゲージメントの高い組織とは、社員が自分の成長にワクワクし、「この会社でもっと成長していきたい」と感じられる組織です。そのために、会社は評価制度や育成の仕組みを整え、社員が挑戦し続けられるよう支援する“成長ジム”として機能すべきでしょう。社員が常に自分を鍛え、高められる環境を用意できれば、エンゲージメントは自然と高まり、会社と社員双方にとってWin-Winの関係が築ける——私は、そう考えております。
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本日も、お読みいただきありがとうございました。
それではまた、次回のブログで。
執筆担当:川上 佳子
代表取締役 福島 隆史
公認会計士。2008年、SusTBを設立。企業の自主的かつ健全な情報開示をサポート。
川上 佳子
中小企業診断士。銀行、シンクタンク勤務を経て2002年より上場企業の情報開示を支援。